メンタルヘルス不調者ゼロを目指すアプローチは、そのまま離職予防になる — 研究データが示す「重なる構造」
「メンタルヘルス対策」と「離職予防」は別物ではない
多くの企業で、メンタルヘルス対策は「産業保健」の領域、離職予防は「人事戦略」の領域として、別々の部署が別々の予算で取り組んでいます。
しかし、最新の研究データは明確に示しています。メンタルヘルスを悪化させる因子と、離職を引き起こす因子は、驚くほど重なっているのです。
つまり、メンタルヘルス不調者をゼロに近づけるための取り組みは、そのまま離職予防施策として機能します。逆もまた然りです。
研究が示す「重なる構造」
BMC Health Services Research(2018年)の研究では、職務満足度・燃え尽き症候群・離職意向の3つが強く相互に関連していることが明らかになりました。メンタルヘルスが悪化する過程と、離職を決意する過程は、実質的に同じ心理プロセスをたどるのです。
メンタルヘルス悪化と離職意向の共通因子
共通因子メンタルヘルスへの影響離職意向への影響
過重労働・業務量過多感情的消耗、燃え尽き症候群「これ以上続けられない」という判断 上司のサポート不足孤立感、ストレス蓄積組織への帰属意識の低下 成長機会の欠如無力感、自己効力感の低下「ここにいても意味がない」という判断 心理的安全性の低さ慢性的な緊張状態職場環境への不信 報酬・承認の不足自己価値感の低下「正当に評価されていない」という不満
PLOS ONE(2022年)の研究では、睡眠障害と疲労が離職意向と実際の離職の両方に有意に関連することが確認されています。身体的な健康問題がメンタルヘルスの悪化を通じて離職行動に結びつく、という経路です。
数字で見る — メンタルヘルス不調と離職の連鎖
Gallup社の分析によると、メンタル不調かつ低エンゲージメントの従業員の年間離職率は24%。一方、健康でエンゲージメントの高い従業員はわずか8%です。3倍の差があります。
Harvard Business Review(2021年)の調査では、さらに衝撃的な数字が報告されました。回答者の50%が「メンタルヘルスの理由で退職した経験がある」と回答しています。
若年層ではこの傾向がさらに顕著です。18〜29歳の従業員の34%がメンタルヘルスへの悪影響を理由に退職を検討しており、50〜64歳(21%)と比較して大きな差があります。
日本の深刻な現実 — 精神障害労災が6年連続で過去最高
日本における精神障害の労災認定件数は、いまや危機的な水準に達しています。
年度支給決定件数前年比
令和4年度(2022年)710件4年連続過去最高 令和5年度(2023年)883件5年連続過去最高 令和6年度(2024年)1,055件6年連続過去最高・史上初の1,000件超え
令和6年度の精神障害労災の原因は、パワーハラスメント(224件)が最多、次いで仕事内容・仕事量の大きな変化(119件)、カスタマーハラスメント(108件)と続きます。
厚生労働省の令和5年労働安全衛生調査によると、過去1年間にメンタルヘルス不調で連続1か月以上の休業または退職した労働者がいた事業所は13.5%。そのうち退職に至った労働者がいた事業所は6.4%です。
強い不安・悩み・ストレスを感じている労働者は82.7%にのぼります。約5人に4人が何らかのストレスを抱えている状況です。
「一次予防」が離職予防と重なる理由
メンタルヘルス対策には3つの段階があります。
段階目的具体例離職予防との関係
一次予防不調の未然防止職場環境改善、ラインケア研修、コンディション分析直接的に重なる 二次予防早期発見・早期対応高ストレス者面談、産業医相談部分的に重なる 三次予防再発防止・復職支援復職プログラム、リワーク支援間接的
注目すべきは「一次予防」です。一次予防とは、従業員がメンタルヘルス不調に陥ることを未然に防ぐ取り組みです。職場のストレス要因そのものを特定し、組織的に改善する。
これは離職予防の取り組みとほぼ同義です。なぜなら、離職予防の本質も「従業員が辞めたいと思う要因を組織的に特定・改善すること」だからです。
WHO/ILOの2022年共同声明でも、最大の効果を得るには以下の3つの包括的アプローチが必要だとされています。
- 職場関連リスク要因を削減してメンタルヘルスを保護する(一次予防)
- 仕事のポジティブな側面と労働者の強みを開発してメンタルヘルスを促進する
- 原因に関わらず労働者のメンタルヘルス問題に対処する
この1番目と2番目は、COCKPITOSが離職予防プラットフォームとして取り組んでいることそのものです。
メンタルヘルス投資のROI — 最大800%のリターン
メンタルヘルス対策は「コスト」ではなく「投資」です。研究データが裏付けています。
- メンタルヘルス施策への1ドルの投資で、1.50〜4.00ドルのリターン(欠勤減少・医療費削減)
- メンタルヘルス促進施策のROIは最大800%(生産性向上・欠勤減少・離職減少の複合効果)
- メンタルヘルス文化を構築した企業は、従業員定着率が20%上昇
National Safety Councilの調査では、メンタルヘルス問題を抱える従業員1人あたりの離職コストは年間5,733ドル(約86万円)、欠勤コストは年間4,783ドル(約72万円)と算出されています。
200人規模の企業で高ストレス者が10%(20人)いた場合、離職リスクだけで年間約1,700万円のコストが潜在的に発生している計算です。
COCKPITOSのアプローチ — メンタルヘルス一次予防=離職予防
COCKPITOSは「離職予防プラットフォーム」として、メンタルヘルスの一次予防を構造的に実現しています。
1. コンディション分析(パルスサーベイ)で兆候を継続的に把握
業務量・同僚サポート・定着意向・上司サポート・成長機会・心理的安全性の6軸を定期的に測定。年1回のストレスチェックでは見逃される「日々の変化」を捕捉します。この6軸は、研究で示されたメンタルヘルス悪化と離職意向の共通因子と一致しています。
2. ストレスチェックで法定義務を果たしながらデータを統合
厚生労働省の素点換算表方式に完全準拠した分析エンジンで、57項目版・80項目版の両方に対応。集団分析結果をコンディション分析データと重ね合わせることで、「なぜストレスが高いのか」の原因特定が可能になります。
3. 1on1面談で「打ち手」を具体化
データに基づいた面談テーマの提案により、上司-部下間の対話を「なんとなくの雑談」から「根拠のある支援」に変えます。上司のサポート力向上は、メンタルヘルス改善と離職防止の両方に直接効く最も効果的な施策の一つです。
4. スキルマップで成長機会を可視化
スキルと業務のミスマッチは、メンタルヘルス悪化の隠れた原因です。1万超のテンプレートスキルから自社に最適なスキルマップを構築し、成長機会の欠如によるメンタル不調と離職の両方を予防します。
「不調者ゼロ」を目指すことが、最強の離職予防策になる
メンタルヘルス不調者をゼロに近づけるための一次予防。それは、職場環境を根本から改善し、従業員が「ここで働き続けたい」と思える組織を作ることです。
これは「離職予防」そのものです。
2つの課題を別々に扱い、別々の予算を組み、別々のツールを導入する必要はありません。メンタルヘルスの一次予防と離職予防を一つのプラットフォームで統合することが、最もコスト効率が高く、最も効果的なアプローチです。
精神障害労災が年間1,000件を超え、労働者の82.7%がストレスを抱える日本。いま必要なのは、「ストレスチェックをやって終わり」の二次予防偏重から、「不調にならない職場環境を作る」一次予防への転換です。
COCKPITOSは、その転換を実現するためのプラットフォームです。まずはお気軽にご相談ください。
参考文献・データソース
- WHO「Mental health at work」(2022)
- WHO/ILO「Mental Health at Work: Policy Brief」(2022)
- 厚生労働省「令和6年度 過労死等の労災補償状況」
- 厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」
- Gallup「State of the Global Workplace Report」
- Harvard Business Review「It's a New Era for Mental Health at Work」(2021)
- BMC Health Services Research「Relationships between burnout, turnover intention, job satisfaction」(2018)
- PLOS ONE「Health problems, turnover intention, and actual turnover」(2022)
- National Safety Council / NORC「Mental Health Cost Calculator Study」
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