ストレスチェック義務化はいつから?2028年4月の全事業所義務化を完全ガイド
【結論・要点】 - ストレスチェックは現在、常時50人以上の事業場に年1回の実施が義務付けられている(労働安全衛生法第66条の10) - 2025年に労働安全衛生法が改正され、全事業場への義務化が確定 - 2028年4月から常時使用する労働者がいる全事業場が対象(50人未満も義務化、努力義務から格上げ) - 実施者は医師・保健師等の有資格者が必要(社労士は実施者になれない) - 個人の結果は本人のみに通知(事業者は本人同意なしに閲覧不可)
1. ストレスチェック義務化の現状と2028年改正
現行制度(2015年〜)
ストレスチェック制度は2015年12月に施行されました。常時50人以上の労働者を使用する事業場では、年1回以上のストレスチェック実施が義務付けられています。
| 事業場規模 | 現行の状況 | 2028年4月以降 |
|---|---|---|
| 常時50人以上 | 義務(2015年〜) | 義務(変更なし) |
| 常時50人未満 | 努力義務 | 義務(2025年改正・2028年4月施行) |
2025年改正の内容
2025年、労働安全衛生法が改正され、ストレスチェック制度の実施義務が常時使用する労働者がいる全事業場に拡大されることが確定しました(2028年4月施行)。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2015年12月 | ストレスチェック制度施行(50人以上義務化) |
| 2024年3月 | 改正方針を公表 |
| 2025年 | 労働安全衛生法改正成立(全事業場義務化が確定) |
| 2028年4月 | 全事業場への義務化施行 |
なぜ全事業場に拡大するのか? 厚生労働省の統計によると、精神障害による労災認定件数は増加傾向にあり、2023年度に883件を記録(過去最多)。特に50人未満の小規模事業場では、産業医選任義務がなく、メンタルヘルス対策が不十分な状況が続いていました。
2. 義務化の対象:誰が対象になるか
事業場の単位
「50人以上」「50人未満」のカウントは、事業場単位で行います。
- 本社(50人)と支社(10人)は別々にカウント
- 本社は従来通り義務対象、支社は2028年4月から新たに義務対象
- 「事業場」とは、労働基準監督署に届け出ている独立した事業単位
カウント対象の労働者
「常時使用する労働者」には以下が含まれます。
| 対象 | カウント |
|---|---|
| 正社員 | ✅ カウント |
| 契約社員・嘱託 | ✅ カウント |
| パート・アルバイト(週20時間以上) | ✅ カウント |
| 派遣労働者(派遣先の場合) | ✅ カウント |
| 役員・経営者 | ❌ 対象外(労働者でないため) |
ストレスチェックの受検義務
労働者本人にストレスチェックの受検義務はありません。定期健康診断は受診義務がありますが、ストレスチェックは「受検の機会を提供する」ことが事業者の義務であり、受検は任意です。
ただし、受検しないと集団分析の精度が下がり、職場環境改善に活かせなくなります。受検率向上のための事前周知が重要です。
3. 実施体制:誰が何を行うか
実施者の要件(重要)
ストレスチェックを実施できる「実施者」には、資格要件があります。
実施者になれる者: - 医師(産業医を含む) - 保健師 - 所定の研修を修了した看護師 - 所定の研修を修了した精神保健福祉士 - 所定の研修を修了した公認心理師 - 所定の研修を修了した歯科医師
⚠️ 社労士は実施者になれません。 社会保険労務士は、ストレスチェック制度の運用支援・集団分析の活用アドバイス・実施機関との連携窓口として機能できますが、実施者(調査票の選定・高ストレス者の判定基準の決定・結果通知)は担えません。
役割分担の全体像
| 役割 | 担当者 | 要件 |
|---|---|---|
| 実施者 | 医師・保健師等 | 資格要件あり |
| 実施事務従事者 | 人事・総務担当者など | 資格不要。ただし人事権を持つ者は不可 |
| 衛生委員会(50人以上) | 既存の委員会 | 実施方針を審議・決定 |
| 事業者(会社) | 経営者・代表者 | 実施義務の主体 |
50人未満事業場の実施者確保
産業医選任義務がない50人未満の事業場では、以下の方法で実施者を確保します。
- 地域産業保健センター(さんぽセンター): 全国に設置。小規模事業場向けに無料で対応(高ストレス者面接指導も依頼可能)
- 外部ストレスチェック実施機関: SaaSプラットフォーム等が実施者(医師・保健師)を手配するサービスを提供
- 嘱託産業医との契約: 近隣の医師・保健師と個別に契約
4. 実施の流れ(6ステップ)
Step 1: 計画策定と体制整備(実施3ヶ月前まで)
- 実施者の確保(外部委託先の選定)
- 実施事務従事者の選任
- 衛生委員会(50人以上)で実施方針の審議・決定
- 使用する調査票の選択(57項目版または80項目版)
Step 2: 従業員への周知(実施1ヶ月前まで)
周知の際に必ず伝える事項: - ストレスチェックの目的(自分のストレス状態を把握するため) - 匿名性(個人の結果は会社に渡らない) - 不利益取扱いの禁止(結果を理由に不利益な扱いをしないこと)
この周知が受検率向上に直結します。
Step 3: ストレスチェック実施(受検期間2〜4週間)
- 調査票の配布・回答(Web推奨、紙も可)
- 実施者が質問項目・高ストレス基準を確定
- 受検期間中の回答率モニタリングとリマインド
Step 4: 結果の通知(実施完了後2週間以内)
⚠️ 個人の結果は本人にのみ通知します。 事業者(会社)は、本人の同意なしに個人の結果を見ることができません。これは労働安全衛生法第66条の10に明記された重要な規定です。
高ストレスと判定された従業員には、医師による面接指導を受ける権利があることを通知します。
Step 5: 高ストレス者への面接指導
高ストレス判定を受けた従業員が自ら申し出た場合、事業者は医師による面接指導を実施する義務があります(強制はできません)。
面接指導の結果に基づき、就業上の措置(残業制限・配置転換等)を講じる場合があります。
Step 6: 集団分析と職場環境改善
10人以上の部署単位で集計し、組織的な傾向を把握します。集団分析は義務ではありませんが、ストレスチェックの最大の活用価値がここにあります。
5. 高ストレス者の判定基準
COCKPITOSでは厚生労働省の標準的な素点換算表方式を採用しています。
- 条件㋐: 心身のストレス反応(6尺度)の合計が一定点数以下
- 条件㋑: 心身のストレス反応が一定点数以下 かつ ストレス要因+サポートが一定点数以下
条件㋐または㋑のいずれかに該当する場合に高ストレス者と判定されます。
注意: 高ストレス者の個人情報(誰が高ストレスか)は事業者に渡りません。事業者が知ることができるのは、集団分析の集計値のみです。
6. 罰則・法的リスク
未実施の場合のリスク
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 労基署の是正勧告 | ストレスチェック未実施は是正勧告の対象 |
| 安全配慮義務違反(民事) | 従業員がメンタル不調を発症した場合、未実施を理由に損害賠償請求のリスク |
| 報告義務違反(50人以上) | 「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」未提出は50万円以下の罰金 |
実施済みでも注意が必要なケース
- 個人結果を本人同意なく事業者に提供した場合 → 法令違反
- 高ストレスを理由に解雇・配置転換等の不利益取扱いをした場合 → 法令違反
- 実施者の資格を確認しなかった場合 → 適法性に問題
7. 50人未満事業場の準備ロードマップ
今すぐやること(2026〜2027年)
- 全事業場の従業員数を確認する(本社・支社・工場ごとに)
- 実施機関の選定(外部委託が一般的)と見積取得
- 担当者の選任(実施事務従事者=人事・総務担当者)
2027年中にやること
- 従業員への事前説明(目的・匿名性・不利益取扱い禁止)
- 実施方法の確定(Web推奨)
- パイロット実施(2028年4月の本番前に試行する余裕があれば)
2028年4月の本番に向けた直前確認
- [ ] 実施者が確保されているか
- [ ] 従業員への周知が完了しているか
- [ ] 回答から結果通知までの流れが決まっているか
- [ ] 高ストレス者が面接指導を申し出た場合の医師が確保されているか
- [ ] 結果の5年間保管体制が整っているか
8. 集団分析の活用法
なぜ集団分析が重要か
ストレスチェックの個人結果は事業者が活用できませんが、集団分析(部署・職種別の集計)は事業者が活用できます。集団分析こそがストレスチェックの組織的活用の核心です。
集団分析でわかること
- 部署ごとの「仕事の量的負担」スコア → 残業が多い部署の発見
- 部署ごとの「上司のサポート」スコア → マネジメント課題の発見
- 部署ごとの高ストレス者比率 → 職場環境改善が急がれる部署の特定
集団分析と離職予防
⚠️ 個人のストレスチェック結果は離職予測に使えません(労働安全衛生法第66条の10の趣旨)。
離職予測・離職予防には、パルスサーベイ・1on1・スキルマップのデータを活用します。ストレスチェックの集団分析は「部署ごとの職場環境の問題」を把握するための手段として位置付けます。
集団分析が10人未満でできない場合
10人未満の小集団では個人が特定される恐れがあるため、集団分析は原則実施できません。
- 複数部署を合算して10人以上の分析単位を構成する
- 職種別・年代別など別の軸で分析する
- 全社集計のみで活用する
9. コスト:安く実施するには
方式別コスト比較
| 実施方式 | 1人あたり費用 | 工数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| SaaS型(Web) | 1,500〜3,000円 | 小 | 自動集計・集団分析・多言語対応 |
| 紙ベース | 700〜1,400円 | 大 | 配布・回収・入力・保管すべて手作業 |
| 産業医委託型 | 5,000〜15,000円 | 小 | 産業医が一貫対応、個別対応が厚い |
30人規模の企業の年間コスト例: - SaaS型: 45,000〜90,000円 - 紙ベース: 21,000〜42,000円(人件費除く)
紙ベースは費用が安く見えますが、集計・入力・保管の人件費を含めると実質コストはSaaS型と同等以上になるケースがほとんどです。
10. よくある質問(FAQ)
Q1. ストレスチェックの義務化はいつから?
A: 現在は常時50人以上の事業場に義務(2015年〜)。2025年改正により、2028年4月から常時使用する労働者がいる全事業場に義務化が拡大されます。
Q2. 50人未満の会社も必ず実施しないといけませんか?
A: 2028年4月以降は義務となります。それ以前は努力義務です。ただし施行まで2年を切っており、早期の体制整備が推奨されます。
Q3. 社労士に実施を依頼できますか?
A: 社労士は実施者にはなれません(実施者は医師・保健師等の有資格者が必要)。ただし、実施機関との連携・制度運用の相談・集団分析の活用支援は社労士が担えます。
Q4. 従業員が受けたくないと言ったらどうする?
A: 受検は任意です(義務はありません)。受検を強制することはできませんが、「結果は会社に渡らない」「不利益な扱いはしない」と丁寧に説明し、任意の参加を促してください。
Q5. 個人の高ストレス結果を人事評価に使えますか?
A: 絶対に禁止です。労働安全衛生法第66条の10で明確に禁止されており、結果を理由とした解雇・降格・配置転換等の不利益取扱いは法令違反となります。
Q6. 集団分析は10人未満の部署でもできますか?
A: 原則としてできません(個人特定の恐れ)。複数部署を合算して10人以上の単位を構成するか、全社集計のみで対応します。
Q7. ストレスチェックの結果はどれくらい保管する?
A: 5年間の保管が法律で義務付けられています(労働安全衛生法施行規則第52条の13)。
11. 一次情報・参考法令
- 厚生労働省 ストレスチェック制度実施マニュアル
- 労働安全衛生法 第66条の10(ストレスチェック等)
- 労働安全衛生規則 第52条の9〜52条の21
まとめ
ストレスチェック義務化のポイントを整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 現在の対象 | 常時50人以上の事業場 |
| 2028年4月以降の対象 | 常時使用する労働者がいる全事業場 |
| 施行根拠 | 2025年労働安全衛生法改正 |
| 実施頻度 | 年1回以上 |
| 実施者要件 | 医師・保健師等(社労士は不可) |
| 個人結果の取扱い | 本人のみ(事業者は本人同意なしに閲覧不可) |
| 集団分析 | 10人以上の単位で実施(努力義務) |
| 保管期間 | 5年間 |
2028年4月施行まで2年を切りました。体制整備・実施機関の選定・従業員への周知には最低3〜6ヶ月かかります。早期準備が安定した義務化対応の鍵です。
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