著者:一木信輔(COCKPITOS株式会社)
ストレスチェックの委託先を選ぶとき、費用や受検のしやすさ、担当者の事務負担を確認することは大切です。従業員がスムーズに受検でき、人事担当者が無理なく運用できる。その土台がなければ、毎年続けることは難しくなります。
ただ、私はそれだけで委託先を決めるのは、もったいないと思っています。
私が最も重視するのは、組織分析の数字をどう解釈し、職場で何をすればよいのかまで明確にできるかです。
「今年も実施できた」で終わるのか。それとも、働きやすい職場をつくるための材料として活用できるのか。この記事では、実施者として職場の課題に向き合ってきた私の視点から、委託先を比較するときに確認してほしいことをお伝えします。
まず確認したい、運用面の9項目
企業が委託先を比較するときによく確認するのが、次の項目です。見積もりと一緒に、自社の実施条件でどこまで対応してもらえるかを確認してください。
| 確認項目 | 委託先に聞いておきたいこと |
|---|---|
| 1. 自社の従業員がWebで受検できるか | 全員に会社のメールアドレスがあるか。ない人には、どのような案内・認証方法を用意できるか。店舗や現場の従業員も無理なく受検できるか。 |
| 2. 紙受検に対応できるか | 紙でしか受検できない人がいる場合に対応可能か。Webとの併用、配布・回収・入力の役割分担と追加費用はどうなるか。 |
| 3. 実施者をどう手配するか | 実施者を自社で別途手配する必要があるか、委託範囲に含められるか。誰が何を担う契約なのか。 |
| 4. 集団分析をどう確認・利用できるか | 画面とダウンロード資料で何を見られるか。部署や拠点の比較、経年変化の確認、社内説明に使う資料を用意できるか。 |
| 5. 実施中のフォローがあるか | 案内、受検状況の確認、未受検者への対応、問い合わせ対応をどこまで支援してもらえるか。 |
| 6. 高ストレス者へのフォローにどのような選択肢があるか | 結果通知後の相談先や医師面接につなぐ案内など、誰がどこまで対応するか。別途手配や費用が必要な範囲は何か。 |
| 7. 必要な関係者と適切に情報を共有できるか | 社内担当者や外部の産業医などに、役割に応じたアカウントを発行できるか。それぞれが閲覧できる情報の範囲を設定できるか。 |
| 8. 必要な報告書の作成を支援できるか | 監督署への報告が必要な場合、作成をどこまで支援するか。作成と提出の担当は誰か。 |
| 9. 会社側の事務負担を抑えられるか | 従業員情報の準備から実施後の処理まで、自社に残る作業と担当者の負担はどの程度か。 |
この表は、委託先を比較するための質問です。COCKPITOSの標準提供範囲を一覧にしたものではありません。
費用も、受検者1人当たりの金額だけでは判断しにくいものです。実施者の手配、紙対応、分析、実施後の支援などを含め、自社に必要な範囲の総額と、社内に残る作業を比べると、選びやすくなります。
数字が並んでいることと、改善に使えることは違う
運用条件を確認したうえで、私なら集団分析のサンプルを見せてもらいます。そして、「この結果から何が分かり、何をする必要があるのでしょうか」と聞きます。
例えば、「上司のサポートが低い」「同僚のサポートが低い」という結果があったとします。それだけでは、なぜ低いのかまでは分かりません。
私が面談を通して見てきた背景には、大きく次の3つがありました。
- 人間関係が悪く、サポートしにくい。
- 忙しすぎて、サポートする余裕がない。
- 助けたい気持ちはあるが、誰が何をしているのか、何を手伝えばよいのかが分からない。
同じ「サポートが低い」という結果でも、背景によって取り組むことは変わります。3つ目の職場に「もっと助け合いましょう」と伝えるだけでは、具体的な行動につながりにくいのです。
数字から考えられる背景を整理し、必要に応じて現場の声を確かめる。私は、その過程が重要だと考えています。数字だけで原因を決めつけず、項目同士の関係も読みながら、改善の出発点を探します。
「誰が、何を変えられるか」まで具体的にする
分析結果を受け取った現場の管理職が、すべてを変えられるわけではありません。管理職ができることと、経営として判断しなければならないことを整理する必要があります。
例えば、私が現場の管理職に提案してきたことの一つが、業務の棚卸しです。
現在抱えている仕事は何か。その仕事に必要なスキルや経験は何か。担当者に必要な権限が与えられているか。判断や確認を求める場面が明確か。仕事を終えた後の責任はどうなっているか。こうしたことを、実際の業務に沿って確認していきます。
同僚同士で仕事の状況を把握する方法や、1on1で何を確認するかを具体的にすることもあります。
一方、経営者に対しては、部署ごとのあるべき姿、人員配置、部門を超えたコミュニケーション、部署間の連携を妨げている点とその解消方法などを提案してきました。
もちろん、これらは一例です。分析結果や職場の状況によって、必要な対応は異なります。だからこそ、「コミュニケーションを改善しましょう」という一般論から、その職場で誰が何に取り組むかへ進めるかどうかを確認してほしいのです。
改善の第一歩は、小さくても「すぐにできること」
改善という言葉を聞くと、大きな制度変更や新たな予算が必要だと感じるかもしれません。私は、まず小さなことでもよいので、すぐにできることから始めてもらいたいと考えています。
例えば、担当者しか把握していない仕事を一つ共有する。判断に迷う場面について、上司に確認する基準を一つ決める。次の1on1で、前回聞いた困りごとに対して何ができたかを確認する。
すべてを一度に解決しようとすると、かえって動けなくなることがあります。できることを決め、取り組み、その後の状況を確かめる。小さな改善を積み重ねることを大切にしています。
委託先を選ぶ際にも、提案の立派さだけでなく、現場が取り組める具体性があるかを見てください。
比較の場で、もう一歩踏み込んで聞いてほしいこと
集団分析のサンプルや支援内容を確認するときには、次の質問が役立ちます。
- この数字をどう解釈していますか。ほかのどの項目と合わせて見ていますか。
- 数字だけでは判断できない点を、どのように確認しますか。
- 部署ごとの課題と、会社全体の課題をどう整理しますか。
- 現場の管理職ができることと、経営判断が必要なことを具体的に説明できますか。
- 分析後、まず取り組む行動は何ですか。その後の状況をどう確かめますか。
- 分析を職場改善につなげる支援について、どのような経験がありますか。
コメントの文字数やグラフの多さだけでは、支援の中身は分かりません。分析から行動につなげる考え方と、それを支える実務経験まで聞いてみることをお勧めします。
この経験を、COCKPITOSの設計に反映しています
私は、ストレスチェックの実施と、その後の職場への支援を通じて得た経験を、COCKPITOSの設計に反映しています。
分析では、AIが結果を解釈し、会社全体として取り組むことを提示します。部署ごとの結果は比べて確認できます。私が重視している項目や項目同士の関係を解釈に取り入れることと、部署ごとの課題とアクションの提示は、いま開発を進めています。
AIの提案だけで職場の事情をすべて判断できるとは考えていません。現場の状況と照らし合わせ、何から取り組むかを考えるための支援として活用する発想です。
また、スキルを可視化するスキルマップや、定期的に状況を確認する1on1も取り入れています。1on1では実施状況の可視化に加え、面談の準備と振り返りのサポートや面談履歴からのアクション抽出を通じて、次の行動につなげることを目指しています。
私がつくりたいのは、年に一度、結果を確認して終わる仕組みではありません。データを手がかりに職場を理解し、小さな改善を続けられる仕組みです。
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今のストレスチェックを、実施後まで活かせていますか
「今の委託先で、実施には困っていない」。それは大切なことです。そのうえで、分析結果を職場の改善に使えているか、もう一度振り返ってみてください。
報告書を受け取った後、取り組むことが決まっているでしょうか。現場の管理職が、自分にできることを理解しているでしょうか。取り組んだ後の状況を確認する機会はあるでしょうか。
今の運用のしやすさを大切にしながら、分析とその後の行動にも目を向ける。それが、委託先選びで私がお伝えしたいことです。
COCKPITOSへの相談は、ストレスチェックの分析についてのご相談からでも構いません。現在の実施方法や予算、分析結果の活用で困っていることをお聞かせください。どの範囲から取り組めるか、必要な支援や費用も含めて相談できればと思います。