ストレスチェック義務化Q&A — 2028年4月全事業所対応版・50人未満事業所の疑問30問

ストレスチェック義務化Q&A — 2028年4月全事業所対応版・50人未満事業所の疑問30問

ストレスチェック義務化Q&A — 2028年4月全事業所対応版・50人未満事業所の疑問30問

2026年10月1日更新(訂正):Q3の「50人」の数え方の説明が、受検対象者の要件と混同していたため訂正しました。あわせて、集団分析の人数(Q11・Q13)、実施者の確保と地域産業保健センター(Q6・Q7)、報告義務(Q22)、法令上の根拠(Q23)などの記載を見直しました。

はじめに

2025年改正法により、2028年4月1日から50人未満を含む全事業所で年1回のストレスチェック実施が義務化されます。

2025年5月公布の改正労働安全衛生法により、ストレスチェックの実施義務が50人未満の事業場へ拡大されることが確定しました(2028年4月1日施行)。従来は常時50人以上の事業場のみが義務の対象でしたが、50人未満の事業場も2028年4月1日から義務化されます。

中小企業・小規模事業所の人事担当者から「何が変わるのか」「自社でどう対応すればよいか」といった質問が急増しています。本記事では、2025年改正・2028年4月施行に対応した30のQ&Aで実務ポイントを解説します。

➡ 制度全体の解説は2028年4月の全事業所義務化を完全ガイド、自社での準備チェックリストは50人未満企業のストレスチェック完全ガイドを参照してください。


第1章: 2025年改正・2028年4月施行の核心

Q1. 具体的に何が変わるのですか?

2025年の労働安全衛生法改正により、50人未満の事業場も2028年4月1日からストレスチェック実施義務の対象となります。「努力義務」から「義務」へ格上げされます。

Q2. いつから義務化されますか?

2028年(令和10年)4月1日から施行されます。施行までは努力義務の期間ですので、この間に実施体制を整えておくことが望まれます。

Q3. 50人のカウントはどう変わりますか?

カウント方法自体に変更はありません。判定は次の2段階で考えます。

① 事業場の人数算定(常時50人以上か) 事業場単位で、常態として使用している労働者の数を数えます。正社員・契約社員に加え、パート・アルバイトは週の労働時間にかかわらず(週1回勤務でも)、継続して雇用し常態として使用していれば含めます。派遣先の事業場では派遣労働者も含めます。

② 受検対象者の判定(誰に実施するか) ストレスチェックを実施すべき労働者は、次の両方を満たす者です。 - 期間の定めのない契約(1年以上の契約、更新により1年以上使用予定、1年以上継続使用を含む) - 週の労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の所定労働時間の4分の3以上

上記の契約期間の要件を満たし、週の労働時間が通常の労働者の概ね2分の1以上の者にも実施することが望ましいとされています。派遣労働者への実施義務は派遣元にあります。

2028年4月以降は50人未満も義務対象になりますが、①の人数は労働基準監督署への報告義務(常時50人以上)の判定などで引き続き使います。

Q4. 支店や営業所はどう扱いますか?

場所的な独立性や業務の実態に照らして、事業場ごとに判定します。本社・支店がそれぞれ独立した事業場であれば、別々に判定します。

Q5. 改正でコストは増えますか?

1人あたりのストレスチェック実施コストは1,500〜3,000円/年が一つの目安です。50人規模なら年間7.5万〜15万円。委託範囲によって変わります。


第2章: 50人未満事業所の具体的な対応

Q6. 産業医がいない事業所はどうすれば?

50人未満の事業所は産業医選任義務がありません。ストレスチェックの実施者と、高ストレス者の面接指導を行う医師を分けて確保します。 - 実施者:外部実施機関への委託、または医師・保健師・所定研修修了者との個別契約 - 面接指導の医師:委託先が手配する医師、嘱託医との契約、または地域産業保健センター(ストレスチェックの結果に基づく医師の面接指導を、依頼に応じて無料で実施可能。利用条件は各センターに確認)

Q7. 実施者(医師・保健師)の確保はどうすれば?

実施者は、医師・保健師、または所定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師です。主に以下の方法があります: 1. 外部ストレスチェック実施機関への委託 2. 近隣の医師(嘱託産業医を含む)・保健師等との個別契約 3. 業種団体の共同実施スキーム活用

なお、地域産業保健センターはストレスチェック自体を実施していません(面接指導の依頼先として活用します)。

Q8. Web実施の方が良いですか?

紙でもWebでも実施できます(法令上Webが必須ということはありません)。紙運用は集計・個人情報管理に工数がかかるため、Webなら次の利点があります: - 集計自動化(人事工数削減) - 閲覧権限による個人情報の管理 - 在宅勤務者も回答しやすい

Q9. 実施事務従事者は誰を置けば?

社内の総務・人事担当者を指名できます。個人情報を扱うため守秘義務が課せられます。ただし、受検者の解雇・昇進・異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、実施の事務に従事できません(労働安全衛生規則第52条の10第2項)。

Q10. 外部委託の費用感は?

中小企業向けの一般的な目安: - 基本パック(年1回・Web実施): 1人あたり1,500〜2,500円 - 集団分析オプション: +500〜1,000円 - 高ストレス者面談: 1回1〜2万円


第3章: 集団分析の要件

Q11. 集団分析とは?

個人を特定せず、部署・役職などの単位で集計し、組織課題を可視化する分析手法です。実施指針では、集計・分析の単位が10人を下回る場合は個人が特定されるおそれがあるため、対象となる全員の同意がない限り、実施者は結果を事業者に提供してはならないとされています。ただし、合計点の集団平均など個人が特定されるおそれのない方法であれば、10人未満でも分析できます(極端に少人数の場合は不適切)。人数は部署の在籍者数ではなく受検者数で確認します。

Q12. 集団分析は義務化されるのですか?

2025年改正後も、集団分析は努力義務のままです。2027年4月1日施行の改正省令で「特定の個人を識別することができない方法」で行うことが明文化されましたが、これは従来の考え方を明文化したもので、集団分析を義務化するものではありません。職場環境の改善につなげるため、実施が強く推奨されます。

Q13. 部署が10人未満の場合は?

複数部署を合算して分析単位を大きくする、職種別・年代別など別軸で集計する(その軸でも人数を確認)、または合計点の集団平均など個人が特定されない方法で分析します。分析の手法と単位は、衛生委員会等(50人未満では関係労働者の意見聴取の場)で事前に決めておきます。

Q14. 集団分析の結果は誰が見られる?

経営層・衛生委員会・産業医などが主な対象です。結果の共有範囲は、管理職個人の評価につながらないよう配慮し、衛生委員会等で審議して決めます。従業員への共有も、個人が特定されない形であれば職場改善に有効です。

Q15. 分析結果をどう活用すべき?

  • 高ストレス部署への業務量調整
  • 管理職への研修実施
  • 職場環境改善施策の優先順位付け
  • 翌年度との比較で効果検証

第4章: 施行までのタイムライン

Q16. 改正までに何を準備すべき?

優先順位: 1. 自社事業場の人数確認と受検対象者の名簿整備(Q3の①②) 2. 実施機関の選定と見積取得 3. 衛生委員会(50人以上)or 関係労働者の意見聴取・全社員周知(50人未満)での実施計画共有 4. 実施方法(Web・紙)の決定 5. 実施事務従事者の選任と研修

Q17. 施行までの期間にやるべきことは?

努力義務期間でも以下が望ましい: - 実施体制の試行(パイロット実施。任意実施でも法令・指針に従った個人情報の取扱いが必要) - 集団分析の試行 - 産業医・外部機関との関係構築

Q18. 導入遅れは罰則対象?

義務化後は労基署の是正勧告(行政指導)の対象となりえます。メンタル不調が発生した場合は、安全配慮義務違反として民事責任を問われるリスクもあります。

Q19. 助成金は使えますか?

中小企業のメンタルヘルス対策には、産業保健関係の助成金などが用意されている場合があります。最新の募集状況は、労働者健康安全機構・労働局等で確認してください。

社労士・行政に個別相談推奨。

Q20. 準備期間は何ヶ月必要?

最低3ヶ月、理想は6ヶ月: - 1〜2ヶ月目: 実施機関選定・契約 - 3〜4ヶ月目: 従業員周知・事前教育 - 5ヶ月目: 実施 - 6ヶ月目: 面接指導・フォローアップ


第5章: 罰則・法的責任

Q21. ストレスチェック未実施の罰則は?

直接の罰金規定はありませんが: - 労基署による是正勧告 - メンタル不調発生時の安全配慮義務違反(民事)

なお、常時50人以上の事業場が報告書を提出しない場合は、報告義務違反として罰則(50万円以下の罰金)の対象です。

Q22. 報告書の提出義務は?

常時50人以上の事業者は 「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」 を労基署に提出します(労働安全衛生規則第52条の21)。現行制度では、50人未満の事業場に報告義務はありません。施行後の取扱いは厚生労働省の最新情報を確認してください。

Q23. 個人結果を人事評価に使ったらどうなる?

個人の結果は、本人の同意なく事業者に提供されない仕組みです(労働安全衛生法第66条の10第2項)。また、ストレスチェックの結果のみを理由とした不利益な取扱いや、面接指導の結果を理由とした不当な配置転換等は、実施指針で禁止されています(法律が直接禁止するのは、面接指導の申出を理由とする不利益取扱い=同条第3項)。要配慮個人情報として、個人情報保護法上の取扱いにも注意が必要です。

Q24. 従業員の受検拒否は可能?

ストレスチェック受検は義務ではありません。ただし実施機会の提供は会社の義務です。受検しないことを理由とした不利益な取扱いは実施指針で禁止されています。未受検者には受検の案内を継続します。

Q25. 高ストレス者の面談を会社が強制できる?

できません。高ストレスで、実施者が面接指導を要すると認めた労働者から申出があった場合に、事業者は遅滞なく医師による面接指導を行う義務を負います(労働安全衛生法第66条の10第3項、同規則第52条の15・52条の16)。


第6章: 実施機関の選び方

Q26. 良い実施機関の条件は?

チェックポイント: 1. 厚労省の実施指針・マニュアルに沿った運用 2. 実施者の資格(医師・保健師・所定研修修了者)が明示されているか 3. Web・紙など自社に合う実施方法 4. 集団分析レポートの提供と、少人数集団の扱い 5. 面接指導を行う医師の手配・案内 6. 個人情報の保管場所・管理体制 7. 多言語対応(外国人労働者がいる場合)

Q27. 料金相場は?

  • 基本: 1,500〜3,000円/人・回
  • 集団分析付き: 2,000〜3,500円/人
  • 産業医面談付き: 別料金(1回1〜2万円)

低価格でも品質が担保されていない機関に注意。

Q28. 契約時の注意点は?

  • 個人情報の取り扱い: 保管場所・暗号化・アクセス権限
  • データの返却・引継ぎ: 契約終了時のデータ取扱い
  • 再委託の有無: 分析が孫請けに出ていないか
  • 実施者の資格: 医師・保健師・所定研修修了者であるか

Q29. 実施機関変更時のデータ移行は?

ストレスチェック結果の記録は、事業者が保存の適切な実施について責任を負います。外部機関を変更した場合は、それぞれの機関が実施した分を保存するか、事業者が指名した保存担当者へ引き継ぎます。事業者の指示に基づく保存担当者間の引継ぎは、本人同意を取得する必要はないとされています(厚労省Q&A Q10-1・Q10-2)。

Q30. 社労士事務所に相談できる?

社労士はストレスチェック制度運用の相談対応が可能です。ただし、社会保険労務士の資格だけでは実施者にはなれません。実施者の資格要件を満たす医師・保健師等(または所定研修を修了した有資格者)を含む体制で実施する必要があります。サービス提供事業者と、実施者として責任を負う資格者を分けて確認してください。


2028年4月義務化対応チェックリスト

  • [ ] 全事業場の人数(常態として使用する労働者・派遣先の派遣労働者を含む)を再確認
  • [ ] 受検対象者(契約期間・週の労働時間の要件)の名簿を整備
  • [ ] 50人未満事業場の対応方針を決定
  • [ ] 実施機関・実施者の選定・見積取得
  • [ ] 面接指導を行う医師の確保(地域産業保健センター等)
  • [ ] 実施方法(Web・紙)の決定
  • [ ] 実施事務従事者の選任(人事権を持つ監督的地位にある者は除く)
  • [ ] 集団分析の実施単位と手法を設計(受検者数で確認・原則10人以上)
  • [ ] 従業員への周知資料準備
  • [ ] 高ストレス者の面接指導フロー整備
  • [ ] PDCA運用体制の設計

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  • 法定の57項目・80項目の調査票に対応(Web受検。紙受検は準備中)
  • Web実施+集計自動化、個人帳票の出力
  • 集団分析(組織分析は10名以上の集団で集計)
  • 産業医向けの高ストレス者一覧・面談管理
  • 労基署提出様式の出力
  • パルスサーベイ・1on1を併用した日常的な職場の状態把握(ストレスチェックの個人結果とは結び付けません)

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2028年4月の義務化に向けた導入の進め方を1冊にまとめています(厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)に基づいて構成)。印刷して社内で回覧したり、上司への説明・稟議の添付資料としてお使いいただけます。料金の記載はありません。

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まとめ

2028年4月のストレスチェック義務化拡大は、中小企業・小規模事業所のメンタルヘルス対策を一段階引き上げる制度改正です。まず「50人」の数え方と受検対象者の要件を区別して、自社の対象を正しく把握することから始めましょう。

早期の体制整備、外部実施機関の活用、集団分析を通じた組織改善まで、「実施して終わり」ではなく「改善のサイクルに繋げる」ことが本来の目的です。社労士・産業医との連携を強化し、2028年4月施行を機に、メンタルヘルス対策を戦略的な人事施策として位置付けることをお勧めします。


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参考(一次資料)

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✍️ この記事を書いた人

一木 信輔 | COCKPITOS株式会社 代表取締役CEO

社会保険労務士/精神保健福祉士・ストレスチェック実施者10年。各媒体で違う角度から発信しています。フォローはこちら:

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