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ステイインタビュー実践ガイド — 退職前に離職理由を聞く逆転発想の定着施策

ステイインタビュー実践ガイド — 退職前に離職理由を聞く逆転発想の定着施策

はじめに

退職面談(イグジットインタビュー)は多くの企業で実施されています。しかし退職を決意した人への面談では、すでに組織に対する不満や不安が蓄積した後で話を聞くことになります。「なぜ辞めるのか」は分かっても、その人を引き止めることはほぼできません

これに対して、ステイインタビュー(Stay Interview / 在籍インタビュー)は、今も在籍している従業員に対して行う面談です。「なぜ今の会社に残っているのか」「これから先、何があればずっと働き続けられるか」を聞くことで、離職を未然に防ぐ情報を得ます。

退職面談は「なぜ去ったか」を学ぶための事後分析。ステイインタビューは「なぜ残るか」を知るための予防策。この逆転発想が、定着率の改善に直結します。


1. ステイインタビューと退職面談の違い

項目 ステイインタビュー 退職面談
タイミング 在籍中(定期実施) 退職決定後
目的 定着要因の把握・強化 退職理由の収集・分析
活用可能性 高い(本人への施策が可能) 低い(次の人への参考にとどまる)
本音度 中〜高(関係性次第) 高い(もう失うものがない)
即効性 高い(すぐ改善できる) なし(当人には遅い)

退職面談で「成長機会がなかった」と繰り返し出ているなら、在籍中の従業員にも同じ不満が蓄積している可能性が高い。ステイインタビューは、退職面談で得たパターンを在籍者に検証・先手対応するための手段にもなります。


2. 誰に、いつ実施するか

2-1. 優先度の高い対象者

全員に一度に実施するのではなく、優先度をつけて着手します。

優先度 高: - 入社 1 年以内(早期離職リスクが最も高い時期) - 直近 6 ヶ月でパルスサーベイの定着意向スコアが下がっている従業員 - 同期や同チームのメンバーが退職した後 - 昇進・昇給がなかった評価期の後

優先度 中: - 勤続 3 年・5 年・10 年の節目 - 部署異動・上司交代から 3 ヶ月以内 - 育休・産休からの復帰後 6 ヶ月以内

優先度 低(継続メンテナンス): - 安定してエンゲージメントが高い従業員(年 1 回程度)

2-2. 実施頻度

  • 新入社員:入社 3 ヶ月・6 ヶ月・1 年の 3 回
  • 一般従業員:年 1〜2 回
  • リスク対象者:状況に応じて随時

月次のパルスサーベイでスコアの変化を検知し、スコアが警戒域に入ったタイミングでステイインタビューを設定するという組み合わせが効果的です。


3. 5 つの必須質問

ステイインタビューのゴールは「情報収集」ではなく「本音の対話」です。質問は絞り込み、深掘りに時間をかけます。

質問 1: 「今の仕事で、一番やりがいを感じる瞬間はいつですか?」

ねらい: 定着要因の把握。何が「残る理由」になっているかを明確にする。

定着要因が「給与」だけなら、他社が高い条件を提示した瞬間に失う。「チームの雰囲気」「仕事の面白さ」など、金銭以外の要因が多いほど定着は安定します。


質問 2: 「最近、仕事で不満を感じたことや、もやもやしたことはありますか?」

ねらい: 離職予兆の早期把握。「不満がない」は理想だが、「言えていない不満がある」ことも多い。

ここで出てきた不満は即対応できるものとできないものに分類し、対応できるものは期限を設けて改善します。「聞いたが何も変わらなかった」は逆効果になるため、アクションのないフィードバックは禁物です。


質問 3: 「あなたが朝、仕事に来る気になれない日があるとしたら、その理由は何ですか?」

ねらい: まだ表面化していない潜在的な不満を引き出す。「ない」という答えが多いが、少し沈黙を置いて待つと本音が出やすい。


質問 4: 「5 年後、どんなキャリアを歩んでいたいですか?今の職場でそれが実現できると思いますか?」

ねらい: キャリアとのミスマッチを確認する。「実現できると思わない」という答えが出れば、キャリア支援の施策(研修・異動・目標設定の見直し)につなげます。


質問 5: 「この会社をもっと良くするために、一つだけ変えられるとしたら何ですか?」

ねらい: 本人視点での改善提案を引き出す。具体的な問いにすることで「分からない」を防ぎます。

複数の従業員から同じ答えが出てきた場合は、組織課題として人事が対応するシグナルです。


4. 面談の進め方

4-1. 事前の準備

  • 目的の説明: 「評価や処遇に影響しない。あなたが働きやすい環境を作るための情報収集」を明確に伝える
  • 記録の取り扱い: 誰が見るか、どう使うかを事前に説明する(信頼確保)
  • 場の設定: 個室または個別オンライン面談、30〜45 分

4-2. 面談中の姿勢

  • 質問は 5 問以内に絞り、一問一問を深掘りする
  • メモを取ることを断りを入れてから行う
  • 管理職が答えを急かしたり、防御的にならない
  • 「それはなぜですか?」「もう少し詳しく教えてもらえますか?」で深める

4-3. 面談後のアクション(最重要)

ステイインタビューの価値は実施後のアクションで決まります。

面談後のアクション タイミング
インタビュー内容を記録・整理 面談直後
即対応できる不満の改善 1 週間以内
人事・経営への報告・共有 2 週間以内
本人への「その後」のフィードバック 1 ヶ月以内
パルスサーベイスコアとの照合 翌月サーベイ時

「聞いたが何も変わらなかった」状況が続くと、従業員は「どうせ言っても無駄」と感じ、次回からのインタビューに協力しなくなります。小さな改善でも「あの面談の結果、○○を変えました」と本人に報告することが信頼につながります。


5. パルスサーベイ・退職面談との組み合わせ

ステイインタビューは単体で実施するよりも、他の施策と組み合わせることで効果が高まります。

施策 役割 組み合わせの効果
パルスサーベイ 月次の定量アラート スコア低下時にステイインタビューをトリガー
1on1 日常的な個人対話 ステイインタビューで出た課題を 1on1 で継続フォロー
退職面談 退職後の原因分析 退職面談のパターンをステイインタビューの質問設計に反映

パルスサーベイで「定着意向スコアが下がっている」ことを検知 → ステイインタビューで「なぜか」を対話 → 1on1 で継続フォロー、というサイクルが最も効果的な離職予防の流れです。

詳しくはパルスサーベイとは? 完全解説および退職面談(イグジットインタビュー)の進め方も合わせてご覧ください。


まとめ

ステイインタビューは、実施コストが低く、即効性の高い離職予防策です。

ポイント 内容
対象者 リスク対象者優先(入社 1 年以内・定着意向スコア低下者等)
頻度 一般従業員は年 1〜2 回、新入社員は 3 ヶ月・6 ヶ月・1 年
必須質問 5 つ(やりがい・不満・朝の憂鬱・キャリア・改善提案)
最重要 面談後 1 週間以内にアクション → 本人へのフィードバック
組み合わせ パルスサーベイ(定量)+ ステイインタビュー(定性)で早期対応

「辞めてから聞く」から「辞める前に聞く」へ。この発想の転換が、定着率向上の第一歩になります。

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