離職率の計算方法と業界平均 2026年版 — 自社の数値を正しく評価する
はじめに
「うちの離職率は高いの?低いの?」——人事担当者なら一度は自問したことのある問いです。しかし、離職率の計算方法は複数あり、業界や企業規模によって評価基準も大きく異なります。正しい計算方法と比較基準を知らなければ、「自社の位置」を正しく判断できません。
本記事では、離職率の計算方法を具体例で解説し、2026年時点の業界別・企業規模別ベンチマークを提示します。自社数値を正しく評価するための判断軸もセットで紹介します。
1. 離職率の計算方法(4種類)
基本式(年間離職率)
計算式:
年間離職率 = 1月〜12月の離職者数 ÷ 1月1日時点の在籍者数 × 100
例: 1月1日に200名在籍、1年間に15名が離職した場合
15 ÷ 200 × 100 = 7.5%
厚生労働省「雇用動向調査」やコンサルティング会社のベンチマークも、この方式が標準です。
月次離職率(短期変動の把握)
計算式:
月次離職率 = 当月離職者数 ÷ 月初在籍者数 × 100
年間換算すると季節性(4月新入社員の試用期間離脱、9月以降の転職シーズン)が見えます。
新卒3年以内離職率
計算式:
3年離職率 = 入社3年以内に離職した人数 ÷ その年度の新卒入社者数 × 100
厚労省「新規学卒就職者の離職状況」で毎年発表される代表指標。2026年時点の大卒3年以内離職率は約33%(全産業平均)。
定着率(裏返し)
計算式:
定着率 = 100 - 離職率
求人広告・採用サイトでは「定着率90%」のほうが響くため、採用広報ではこちらを用います。
2. 計算時の落とし穴
落とし穴1: 分母の取り方
- 「1月1日在籍者」で計算するのが標準
- 「期中平均」で計算すると値が変わる(増員局面で低め、縮小局面で高めに出る)
- ベンチマーク比較する際は期首在籍者基準に統一する
落とし穴2: 定年退職・会社都合の扱い
- 厚労省統計: 自己都合・会社都合・定年を全て含む
- 経営指標としての離職率: 定年退職を除外する企業が多い
- どの定義で計算しているかを社内・社外で合わせる
落とし穴3: 育休・休職中の扱い
- 復帰する見込みの休職者は在籍者としてカウント
- 長期休職後の退職は「離職」に含める
- 判断基準を人事規程で明文化しておく
落とし穴4: 個人事業主・業務委託
- フリーランス新法施行後、業務委託と従業員の区分が厳格化
- 離職率は従業員ベース(雇用契約あり)で計算
3. 2026年業界別ベンチマーク
全産業平均(厚労省「雇用動向調査」ベース)
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 年間離職率(全産業平均) | 15.4% |
| 新卒大卒3年離職率 | 33.2% |
| 新卒高卒3年離職率 | 38.1% |
| 正社員離職率 | 11.6% |
| パートタイム労働者離職率 | 23.1% |
業種別年間離職率(離職率が高い順)
| 業種 | 離職率 | 備考 |
|---|---|---|
| 宿泊業・飲食サービス業 | 26.9% | 慢性的な人手不足、シフト負担 |
| 生活関連サービス業・娯楽業 | 22.3% | 非正規雇用多い |
| 医療・福祉 | 18.6% | 夜勤・看護師不足 |
| サービス業(他に分類されないもの) | 18.1% | - |
| 卸売業・小売業 | 14.2% | - |
| 教育・学習支援業 | 14.5% | - |
| 情報通信業 | 10.2% | エンジニア市場流動性 |
| 製造業 | 10.0% | - |
| 建設業 | 9.5% | 2024年問題後も人手不足継続 |
| 金融業・保険業 | 8.3% | 定着性高い |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 5.0% | 最も離職率低い |
出典: 厚生労働省「令和5年雇用動向調査」(2026年公表)
新卒3年以内離職率(業種別)
| 業種 | 大卒3年離職率 |
|---|---|
| 宿泊業・飲食サービス業 | 51.4% |
| 生活関連サービス業・娯楽業 | 47.4% |
| 教育・学習支援業 | 46.0% |
| 医療・福祉 | 38.8% |
| 小売業 | 38.5% |
| 運輸業・郵便業 | 26.7% |
| 情報通信業 | 27.9% |
| 金融業・保険業 | 23.0% |
| 建設業 | 29.6% |
| 製造業 | 20.0% |
4. 企業規模別ベンチマーク
| 企業規模 | 年間離職率 |
|---|---|
| 1,000人以上 | 12.8% |
| 300〜999人 | 14.3% |
| 100〜299人 | 15.6% |
| 30〜99人 | 17.8% |
| 5〜29人 | 21.4% |
傾向: 企業規模が小さいほど離職率が高い。規模の経済・福利厚生・キャリアパスの違いが影響。
5. 自社数値を正しく評価する6つの観点
観点1: 業界平均との比較
業界平均と単純比較して「上か下か」を把握。ただし業界平均より1〜2ポイント悪い程度なら、絶対値より推移が重要。
観点2: 経年推移の方向性
3年の推移で方向性を判断: - 改善傾向: 何が効いているかを特定して継続 - 悪化傾向: ボトルネック特定が急務 - 横ばい: 業界平均との比較で判断
観点3: 属性別の分解
全社離職率だけでは見えないものがあります。以下で分解:
- 年代別(20代/30代/40代/50代以上)
- 勤続年数別(1年未満/1〜3年/3〜10年/10年以上)
- 部門別
- 役職別(一般/主任/管理職)
- 雇用形態別(正社員/契約/パート)
例: 全社は10%でも「入社3年以内の20代が30%」なら、新卒・若手リテンションに問題。
観点4: 離職理由の質的分析
退職者面談(Exit Interview)で以下を分類: - キャリア(成長機会不足、昇進停滞) - 人間関係(上司、同僚、ハラスメント) - 処遇(給与、評価、福利厚生) - 業務(業務量、業務内容、勤務地) - 家庭事情
観点5: 引き留め成功率
「辞めると申告→引き止めで残留」の率も重要指標。 - 引き止め率 0% = 完全に手遅れ - 引き止め率 10-20% = 通常レベル - 引き止め率 30% 以上 = 早期検知が機能
観点6: 競合との比較
同業他社のIR情報・有価証券報告書に記載される「平均勤続年数」「離職率」を比較。 転職市場データ(リクルート、パーソルなど)も参照。
6. 離職率が高い時の対処フロー
Step 1: 現状把握(1ヶ月)
- 過去3年の離職率推移
- 属性別分解
- 離職理由の分類
Step 2: ボトルネック特定(1ヶ月)
- パルスサーベイで6軸(業務量/同僚サポート/定着意向/上司サポート/成長機会/心理的安全性)を測定
- どの軸のスコアが低いか特定
Step 3: 施策立案(1ヶ月)
- ボトルネックに対する施策
- 実行者・予算・期限の明確化
Step 4: 実行・モニタリング(3〜6ヶ月)
- 毎月進捗確認
- 離職率・パルススコアの変化を追跡
Step 5: 効果検証(6ヶ月〜1年)
- 離職率の変化を定量評価
- 施策の継続・中止・修正を判断
7. KPIとしての離職率設計
単独KPIにしない
離職率だけを目標にすると、以下の副作用があります: - 辞めて欲しい人を引き止める動機が生まれる - 新規採用を抑える動機が生まれる - 数字を良く見せる操作の誘惑
複合指標で運用
推奨指標セット: | 指標 | 目標例 | |-----|-------| | 年間離職率 | 業界平均以下 | | 新卒3年離職率 | 業界平均以下 | | ハイパフォーマー離職率 | 全社平均の半分以下 | | パルスサーベイ定着意向 | 改善傾向 | | 管理職エンゲージメント | 全社平均以上 |
8. COCKPITOSで離職率を可視化
COCKPITOSは離職率を多角的に可視化する機能を提供しています。
- 月次/年次離職率の自動集計
- 属性別(年代・部門・勤続年数)分解レポート
- パルスサーベイ6軸との相関分析
- 離職予兆の早期検知(個人レベルのアラート)
- 業界平均との比較ダッシュボード
まとめ
離職率は「単純な率」ではなく、計算方法・比較基準・属性分解・質的分析の4要素を組み合わせて評価すべき指標です。業界平均・企業規模平均・自社の推移を複数の観点で重ね合わせることで、はじめて「自社の位置」が正しく見えてきます。
数値に一喜一憂するのではなく、データから構造的な問題を発見し、打ち手につなげることが、人事担当者の本当の仕事です。
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