ストレスチェック実施者の資格要件と役割分担 — 精神保健と労務管理の両方から職場改善を支援する

ストレスチェック実施者の資格要件と役割分担 — 精神保健と労務管理の両方から職場改善を支援する

2026年10月1日 訂正・更新:実施者の資格の表を訂正しました(准看護師を削除し、精神保健福祉士等に必要な研修要件を追記)。あわせて、ストレスチェックの実施者・医師による法定の面接指導・医師以外の専門職による相談支援を区別する形に本文を改め、資格ごとの○△×比較表を削除しました。

はじめに

ストレスチェックの実施者は、法令で定められた資格・要件を満たす者でなければなりません。また、ストレスチェックの結果、高ストレスで面接指導が必要と実施者が認めた労働者が申し出た場合に行う「面接指導」は、医師が行うものです。

一方、高ストレスの背景には、長時間労働やハラスメント、雇用・在留に関する不安など、労務管理上の課題が関係している場合があります。こうした課題は、医師の面接指導とは別に、職場環境の改善や相談支援の場で扱う必要があります。

本記事では、①ストレスチェックの実施者、②法定の面接指導を行う医師、③医師以外の専門職による相談支援、という3つの役割を整理したうえで、精神保健と労務管理の両方の視点を持つことが職場改善にどう役立つかを解説します。


1. ストレスチェック実施者の資格要件

ストレスチェックの実施者は、労働安全衛生規則第52条の10で定められています。

資格 要件
医師 ―
保健師 ―
歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師 厚生労働大臣が定める研修の修了が必要
  • 看護師・精神保健福祉士については、一定期間(3年以上)労働者の健康管理等の業務に従事した経験がある者を研修不要とする経過措置があります(厚生労働省Q&A Q6-6)。
  • 検査を受ける労働者について、解雇・昇進・異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事できません(同規則第52条の10第2項)。

社会保険労務士の資格だけでは、ストレスチェックの実施者にはなれません。 ただし、上記の資格・研修要件を満たす者が社労士資格をあわせ持つことまで排除されるものではありません。なお、実施者となるために複数の資格を持つことは法令上の要件ではありません。


2. 「実施者」「面接指導を行う医師」「相談支援」は別の役割

ストレスチェック制度では、次の役割を区別して理解することが大切です。

役割 担い手 主な内容
ストレスチェックの実施者 医師・保健師、研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師 検査の実施、結果の本人への通知、面接指導が必要な者の判断、面接指導の申出の勧奨
法定の面接指導 医師 申出をした労働者への面接指導(勤務の状況・心理的な負担の状況・その他心身の状況の確認)、就業上の措置に関する意見
相談支援 医師以外の専門職を含む相談窓口など 悩みの相談、受診や面接指導の申出の後押し、職場環境・労務管理の改善の支援

押さえておきたいポイントは次のとおりです。

  • 高ストレスで、面接指導が必要と実施者が認めた労働者から申出があったとき、事業者は医師による面接指導を行わなければなりません(労働安全衛生法第66条の10第3項)。
  • 事業者は面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、その意見を勘案して必要があると認めるときは、就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮などの措置を講じます(同条第5項・第6項)。
  • 精神保健福祉士などの医師以外の専門職による相談や、労務管理の改善支援は有益ですが、法定の医師による面接指導の代わりにはなりません。

3. 高ストレスの背景に労務課題がある場面

医師の面接指導や相談の場で、次のような労務上の課題が見えてくることがあります。

場面1: 長時間労働が背景にある場合

「残業が多い状態が続いている。上司に言っても改善されない。」

医師の面接指導では心身の状況や勤務の状況を確認し、医師が就業上の措置について意見を述べます。それとは別に、職場側では、時間外労働の上限規制(労働基準法第36条)や36協定の内容に照らして労働時間管理を見直す必要があるかを確認することが重要です。

場面2: 外国人従業員の場合

「在留資格の更新が近いが、会社が手続きを手伝ってくれない。このまま働けなくなるかもしれない。」

外国人従業員のストレスには、雇用契約・労働条件・社会保険・在留に関する不安などが重なっていることがあります。相談の場ではこれらを整理し、内容に応じて会社の担当部署や適切な専門家・行政窓口につなぐことが大切です。

場面3: ハラスメントが背景にある場合

「上司から毎日怒鳴られている。相談窓口に行ったら『大げさだ』と言われた。」

ハラスメントへの対応では、事実確認の手順や相談窓口の運用など、職場の体制が問われます。相談で把握した課題を、本人の意向と個人情報の取扱いに配慮しながら、職場環境の改善につなげることが重要です。


4. 精神保健と労務管理の両方から、職場改善を支援する

心身の状態と職場の課題を切り分けて整理できる

精神保健の視点では本人の心身の状態や支援の必要性を、労務管理の視点では労働時間・業務の割り振り・相談体制などの職場の課題を整理できます。両方の視点があると、「医師の面接指導につなぐべきこと」と「職場の制度・運用として改善すべきこと」を分けて考えやすくなります。

就業上の措置の要否と内容は、医師の意見を勘案して事業者が判断するものです。労務管理の知見は、その措置を実際の勤務体制や就業規則の運用にどう落とし込むかを検討する場面で役立ちます。

個人情報の保護と不利益取扱いの防止に配慮した運用

ストレスチェックの個人の結果は、本人の同意なく事業者に提供されません(労働安全衛生法第66条の10第2項)。また、面接指導の申出をしたことを理由とする不利益な取扱いは法律で禁止されており(同条第3項)、ストレスチェックを受けないことや、結果の事業者への提供に同意しないことなどを理由とする不利益な取扱いも、厚生労働省の指針で禁止されています。

職場改善の検討にあたっては、こうしたルールを踏まえ、個人が特定されない形で課題を扱うこと、本人の同意の範囲を守ることが前提になります。


5. 委託先を選ぶ際のチェックポイント

外部委託先を選ぶ際は、次の点を確認することをおすすめします。

チェック項目 確認方法
実施者の資格と研修要件 資格の種類と、必要な場合は研修修了(または経過措置への該当)を確認する
医師による面接指導の体制 面接指導を行う医師は誰か(産業医・委託先の医師など)、申出から実施までの手順
個人結果の取扱い 本人同意の取得方法、事業者に提供される情報の範囲、記録の保存方法
相談支援の範囲 医師の面接指導とは別に、どのような相談・職場改善支援を受けられるか
外国人従業員への対応 対応言語・通訳の手配の有無

まとめ

  • ストレスチェックの実施者は、医師・保健師、または研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師です。社労士資格だけでは実施者になれません。
  • 高ストレス者からの申出による法定の面接指導は医師が行い、事業者は医師の意見を勘案して就業上の措置を判断します。
  • 医師以外の専門職による相談や労務管理の改善支援は、法定の面接指導の代わりにはなりませんが、職場の課題を整理し改善につなげるうえで役立ちます。
  • 個人の結果は本人の同意なく事業者に提供されず、申出等を理由とする不利益な取扱いは禁止されています。

ストレスチェックの実施体制について詳しくはストレスチェックの実施体制の整え方もご覧ください。

COCKPITOSでは、所定の研修を修了した精神保健福祉士である代表(社会保険労務士でもあります)が実施者を担当します。医師の手配・面接指導は個別にご相談ください。精神保健と労務管理の両面から、職場環境の改善を支援します。詳しくは無料相談・お問い合わせからご連絡ください。

社労士事務所として顧問先にストレスチェックを提案したい場合は、COCKPITOSのパートナープログラムをご覧ください。

✍️ この記事を書いた人

一木 信輔 | COCKPITOS株式会社 代表取締役CEO

社会保険労務士/精神保健福祉士・ストレスチェック実施者10年。各媒体で違う角度から発信しています。フォローはこちら:

X LinkedIn Facebook はてブ

ストレスチェックの、次の一歩へ。

記事で確認した課題に合う機能と進め方を確認し、自社の運用をご相談ください。

離職予防を、データで実現する

ストレスチェック・パルスサーベイ・1on1・研修管理を
ひとつのプラットフォームで

無料デモを試す