2026年労働法改正 対応チェックリスト — 人事担当者の年間ロードマップ

2026年労働法改正 対応チェックリスト — 人事担当者の年間ロードマップ

2026年10月1日更新:対象企業規模・施行日・罰則の記載を厚生労働省等の公表資料に基づき訂正しました(男性育休取得状況の公表対象、男女間賃金差異等の公表対象、障害者法定雇用率の引上げ時期、フリーランス法の罰則、ストレスチェックの義務化時期など)。

はじめに

2025年から2028年にかけて、労働関連法の改正・施行が続いています。人事担当者は「何が法律上の義務で、いつから・どの規模の企業が対象か」を整理しておかないと、対応漏れが生じるおそれがあります。

本記事では、2026年時点で確認しておきたい改正を実務チェックリストとして整理します。各チェック項目には、法令上の義務と、実務上の推奨(自社判断の取組)が混在しています。義務かどうかは各項目の「改正のポイント」と厚生労働省等の一次資料で確認してください。


1. 育児・介護休業法(2025年4月・10月に段階施行)

改正のポイント

  • 男性の育児休業取得状況の公表義務の対象拡大:2025年4月1日から、常時雇用する労働者が300人を超える企業が対象(それまでは1,000人超)。年1回、公表前事業年度の終了後おおむね3か月以内に、インターネット等で公表(義務)
  • 子の看護等休暇の見直し(2025年4月1日):対象を小学校3年生修了までに拡大、取得事由に学級閉鎖・入園(入学)式等を追加(義務)
  • 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大(2025年4月1日):小学校就学前の子を養育する労働者まで(義務)
  • 育児のためのテレワーク導入(2025年4月1日):3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できる措置(努力義務)
  • 介護離職防止のための雇用環境整備・個別の周知・意向確認(2025年4月1日・義務)
  • 柔軟な働き方を実現するための措置と個別の周知・意向確認(2025年10月1日):3歳から小学校就学前の子を養育する労働者について、5つの措置から2つ以上を選択して講じる(義務)
  • 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮(2025年10月1日):本人または配偶者の妊娠・出産等の申出時と、子が3歳になる前の時期に実施(義務)

チェックリスト

  • [ ] 自社の常時雇用する労働者数が300人を超えるか確認(男性育休取得状況の公表義務の対象判定)
  • [ ] 公表対象の場合、男性の育児休業等の取得率(または育児目的休暇を含む取得率)の集計フローを整備
  • [ ] 公表先(自社サイト、厚生労働省「両立支援のひろば」等)を決定
  • [ ] 子の看護等休暇・所定外労働の制限の改正内容を就業規則に反映
  • [ ] 柔軟な働き方を実現するための措置(2つ以上)を選択し、過半数組合等の意見を聴いたうえで規程化
  • [ ] 妊娠・出産等の申出時、子が3歳になる前の個別の周知・意向確認/意向聴取の様式(面談・書面等)を整備
  • [ ] 介護に関する雇用環境整備(研修・相談窓口等のいずれか)と、40歳等の時期の情報提供を実施
  • [ ] 育児のためのテレワーク制度の導入を検討(努力義務)
  • [ ] 管理職への研修実施(推奨:育休取得者への配慮、ハラスメント防止)
  • [ ] 育休取得者の業務代替体制・復帰後のキャリア面談を計画(推奨)

対応期限

  • 改正事項はいずれも施行済み(2025年4月1日・2025年10月1日)。未対応の項目は速やかに対応
  • 男性育休取得状況の公表:事業年度ごとに、公表前事業年度の終了後おおむね3か月以内(例:3月決算の企業は6月末が目安。決算月によって異なります)

2. ハラスメント対策(パワハラ防止措置+2026年10月からの新たな措置義務)

改正のポイント

  • パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置は、すでに全企業の義務(施行済み)
  • 2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策と、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策について、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務に
  • 研修の頻度などは法律で一律に定められたものではなく、措置義務の内容(方針の明確化・周知、相談体制の整備、事後の迅速・適切な対応等)を踏まえて自社で設計する

チェックリスト

  • [ ] カスタマーハラスメント・求職者等へのセクハラに関する方針の明確化と社内周知(2026年10月1日施行分)
  • [ ] 相談窓口の利用実績を年次で振り返る(推奨)
  • [ ] 相談件数が少ない場合、相談しにくい環境になっていないか点検(推奨)
  • [ ] 管理職向けハラスメント研修を定期的に実施(推奨。頻度は自社で設定)
  • [ ] 外部相談窓口(EAP等)の活用検討(推奨)
  • [ ] 相談者・被害者保護の手順を文書化
  • [ ] ハラスメント発生時の社内調査体制を整備
  • [ ] 必要に応じて顧問弁護士・社労士等と連携(推奨)
  • [ ] 衛生委員会等でハラスメント対策の状況を共有(推奨)
  • [ ] パルスサーベイ等で職場環境を継続的に把握(推奨)

対応期限

  • カスタマーハラスメント・求職者等へのセクハラ対策:2026年10月1日施行
  • その他:通年で継続的に対応

3. ストレスチェック(2028年4月から50人未満の事業場も義務化)

改正のポイント

  • 労働者数50人以上の事業場は、引き続き実施義務
  • 2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、2028年4月1日から労働者数50人未満の事業場にも実施が義務化
  • 集団分析は努力義務(労働安全衛生規則第52条の14)。2026年6月30日公布の省令改正(2027年4月1日施行)で「特定の個人を識別することができない方法で」行うことが明文化されたが、これは従来の解釈を明文化したもので、集団分析を一律に義務化する改正ではない
  • 集計・分析の単位が10人を下回る場合は、原則として集団分析を実施しない。ただし、全57項目の合計点の平均値を求める方法など、個人が特定されるおそれのない方法による分析は可能とされている(極端に少人数の場合は不適切)

チェックリスト

  • [ ] 自社の事業場ごとの労働者数を確認
  • [ ] 50人未満の事業場について、2028年4月までに実施体制(実施者、実施方法〈紙・Web〉、外部委託の要否)を検討
  • [ ] 産業医のいない事業場は、地域産業保健センター等の活用を検討
  • [ ] 外部実施機関の選定(費用・実施体制・個人情報の取扱いを比較)
  • [ ] 高ストレス者の医師による面接指導の申出フローを整備
  • [ ] 面接指導の申出をしやすくする工夫(推奨:個別の勧奨、オンライン面談の活用等)
  • [ ] 集団分析の単位を、受検者数と個人が特定されない方法の観点から設定(努力義務)
  • [ ] 集団分析結果を職場環境改善に活用(推奨:経営会議・衛生委員会での共有、改善活動のPDCA、翌年との比較)

対応期限

  • 50人以上の事業場:現行どおり毎年実施
  • 50人未満の事業場:2028年4月1日から義務。2026〜2027年度中の準備が望ましい(推奨)

4. フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)

改正のポイント

  • 2024年11月1日施行
  • 取引条件の明示、期日における報酬支払(給付受領日から60日以内のできる限り短い期間内)、募集情報の的確表示、6か月以上の業務委託における育児介護等と業務の両立への配慮、ハラスメント対策に係る体制整備など。どの義務が課されるかは、発注事業者の区分や委託期間により異なる
  • 違反に対しては、指導・助言、勧告、勧告に従わない場合の命令・公表があり、命令違反には50万円以下の罰金

チェックリスト

  • [ ] フリーランスへの発注実態を全社調査
  • [ ] 発注時の取引条件明示(書面または電磁的方法)のテンプレート整備
  • [ ] 報酬の支払期日が給付受領日から60日以内に設定されているか確認
  • [ ] 6か月以上の業務委託について、育児介護等との両立への配慮の申出に対応できる体制を整備
  • [ ] 募集情報の表示ルールを社内に周知
  • [ ] フリーランスとの契約書ひな形を同法に沿って更新
  • [ ] ハラスメント対策に係る体制(相談対応等)を整備
  • [ ] 発注担当者への研修実施(推奨)
  • [ ] 公正取引委員会・厚生労働省のガイドライン等の改定を確認

対応期限

  • 即時対応(2024年11月1日施行済み)

5. 女性活躍推進法(男女間賃金差異・女性管理職比率の公表)

改正のポイント

  • 男女間賃金差異の公表は、2022年7月8日から常時雇用する労働者301人以上の企業に義務付け
  • 2026年4月1日から、男女間賃金差異の公表義務が101人以上の企業に拡大され、新たに女性管理職比率の公表も101人以上の企業に義務化(100人以下は努力義務)
  • 301人以上:男女間賃金差異・女性管理職比率に加え、2項目以上を公表
  • 101〜300人:男女間賃金差異・女性管理職比率に加え、1項目以上を公表
  • 差異の要因分析や改善計画は、公表義務とは別の自主的な取組(推奨)

チェックリスト

  • [ ] 自社の常時雇用する労働者数(101人以上/301人以上)を確認し、公表必須項目を整理
  • [ ] 直近事業年度の男女間賃金差異(全労働者・正規・非正規)を集計
  • [ ] 女性管理職比率(課長級以上。役員を除く)を集計
  • [ ] 選択公表項目を決定
  • [ ] 公表先(自社サイト、厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」等)を決定
  • [ ] 職位別・年代別に差異要因を分析(推奨)
  • [ ] 是正目標の設定、評価・昇進制度の公平性レビュー(推奨)
  • [ ] 女性のキャリア継続支援(推奨:育休復帰・時短後の評価制度等)

対応期限

  • 初回の男女間賃金差異・女性管理職比率の公表(2026年4月改正分)は、改正法施行後に最初に終了する事業年度の実績を、次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に公表

6. 労働安全衛生法関連の継続課題

チェックリスト

  • [ ] 健康診断の有所見者への事後措置実施
  • [ ] 長時間労働者への医師による面接指導(時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者の申出による)
  • [ ] 衛生委員会の毎月1回以上の開催と記録(労働者数50人以上の事業場)
  • [ ] 産業医の職場巡視(原則月1回。所定の情報提供等がある場合は2か月に1回)
  • [ ] 化学物質取扱事業場のリスクアセスメント
  • [ ] 過労死等防止対策の周知(推奨)
  • [ ] テレワーク従事者の労働時間管理体制

7. 高年齢者雇用安定法

改正のポイント

  • 70歳までの就業機会確保が努力義務
  • 多様な選択肢(雇用継続・業務委託・社会貢献活動等)

チェックリスト

  • [ ] 60歳定年後の雇用継続制度の見直し
  • [ ] 65歳〜70歳の業務設計
  • [ ] 高齢者向けスキル更新研修の実施(推奨)
  • [ ] 高齢者対応の安全配慮(健康診断・職場環境)
  • [ ] 業務委託・社会貢献活動の選択肢提示
  • [ ] 評価・処遇制度の年齢に応じた調整(推奨)

8. 障害者雇用促進法

改正のポイント

  • 一般事業主(民間企業)の障害者法定雇用率は、2026年7月1日から2.5%から2.7%に引上げ
  • 雇用しやすい職場環境整備義務

チェックリスト

  • [ ] 2026年7月以降の法定雇用率2.7%で、自社の達成状況を確認
  • [ ] 未達の場合は採用計画策定
  • [ ] 障害者雇用の実態調査と業務マッチング
  • [ ] 合理的配慮措置の実施
  • [ ] 障害者向け相談窓口の設置
  • [ ] 特例子会社・事業協同組合の活用検討

9. 個人情報保護法(人事データ管理)

チェックリスト

  • [ ] 人事データの利用目的を特定し、就業規則・社内規程等で明示
  • [ ] 第三者提供の同意取得フロー整備
  • [ ] 漏えい等発生時の報告・本人通知の要否判断と体制(個人情報保護委員会への報告等)
  • [ ] 退職者データの保管期間ルール
  • [ ] 委託先(給与計算・健康管理等)の安全管理措置確認
  • [ ] 人事システムのアクセス権限見直し
  • [ ] AIによる人事評価を行う場合の透明性確保(推奨)

10. 年間ロードマップ(推奨スケジュールの一例)

※3月決算の企業を想定した例です。公表期限は事業年度により異なります。

Q1(4〜6月)

  • 女性活躍推進法の改正(2026年4月施行)に伴う公表項目の確認
  • 男性育休取得状況の集計・公表(3月決算なら6月末が目安)
  • フリーランス契約書の見直し

Q2(7〜9月)

  • 障害者法定雇用率2.7%(7月1日〜)の達成状況確認
  • カスタマーハラスメント・求職者等へのセクハラ対策の準備(10月1日施行)
  • ストレスチェック実施準備

Q3(10〜12月)

  • ストレスチェック実施
  • 来年度の人事制度設計
  • 50人未満事業場のストレスチェック体制(2028年4月義務化)の検討

Q4(1〜3月)

  • 集団分析と職場環境改善計画
  • 男女間賃金差異・女性管理職比率の年度集計
  • 来年度の研修計画策定

11. 対応漏れ時のリスク

対応項目 漏れた場合のリスク
ストレスチェック未実施 労働安全衛生法上の実施義務違反(現行は50人以上の事業場、2028年4月から全事業場)
男性育休取得状況の未公表 育児・介護休業法上の公表義務違反(300人超の企業)。行政による助言・指導等の対象となりうる
ハラスメント防止措置の不備 措置義務違反として行政指導等の対象となりうるほか、紛争・損害賠償リスク
フリーランス法の義務違反(取引条件の明示等) 指導・助言、勧告、命令・公表。命令違反は50万円以下の罰金
男女間賃金差異・女性管理職比率の未公表 女性活躍推進法上の公表義務違反(101人以上の企業)
障害者雇用率未達 常用労働者100人超の事業主は、不足1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金

12. COCKPITOSでできること

COCKPITOSは、上記のうち次の領域の運用を支援します。法改正対応の全体は、社労士・産業医・顧問弁護士等の専門家と確認しながら進めてください。

  • ストレスチェック実施〜集団分析〜面談管理
  • パルスサーベイによる職場環境の継続的な把握
  • 1on1の記録・管理

まとめ

2025〜2028年は、育児・介護休業法、女性活躍推進法、障害者法定雇用率、ハラスメント対策、ストレスチェックと、施行日と対象規模の異なる改正が続きます。まず自社の労働者数と事業年度を確認し、どの義務が・いつから自社に適用されるかを一覧化することが出発点です。

本チェックリストは一般的な整理であり、個別の適用判断は最新の一次資料と専門家にご確認ください。


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参考資料

  • 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf
  • 厚生労働省「男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員300人超1,000人以下の企業にも義務化されます」 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001029776.pdf
  • 厚生労働省「女性活躍推進法が改正されました!」 https://www.mhlw.go.jp/content/001668255.pdf
  • 福岡労働局「障害者法定雇用率の引上げ」 https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/news_topics/houdou/_03097.html
  • 富山労働局「ハラスメント対策・女性活躍推進に関する法改正について」 https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/customerharassment.html
  • 厚生労働省「ストレスチェック制度」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
  • 厚生労働省「ストレスチェックの『集団分析』を適切に実施しましょう!」 https://www.mhlw.go.jp/content/001725894.pdf
  • 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法パンフレット」 https://www.jftc.go.jp/file/flpamph.pdf
  • 高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金制度の概要」 https://www.jeed.go.jp/disability/about_levy_grant_system.html

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✍️ この記事を書いた人

一木 信輔 | COCKPITOS株式会社 代表取締役CEO

社会保険労務士/精神保健福祉士・ストレスチェック実施者10年。各媒体で違う角度から発信しています。フォローはこちら:

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