2026年10月1日 訂正・更新:就業上の措置の時期(「1ヶ月以内に措置」としていた記載を、医師からの意見聴取の時期と区別)、申出の窓口(「匿名ルート」の表現)、面接指導の勧奨を行う者、面接指導結果の記録の作成・保存と情報管理について、厚生労働省の資料に沿って訂正しました。根拠を確認できなかった割合の数値は削除しました。
はじめに
ストレスチェックの結果、心理的な負担の程度が高く、面接指導が必要と実施者が認めた労働者が申し出た場合、事業者は医師による面接指導を行わなければなりません(労働安全衛生法第66条の10第3項)。
しかし、高ストレスと判定されても、申出をためらう人は少なくありません。本記事では、申出しやすい手順づくりと、面接指導の実施・医師の意見聴取・就業上の措置・記録までの実務ポイントを解説します。
面接指導の基本的な流れ(厚生労働省の解説より)
| 段階 | 時期の目安 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 本人が面接指導を申し出る | 結果の通知後、遅滞なく(概ね1か月以内) | 労働安全衛生規則第52条の16第1項 |
| 事業者が医師による面接指導を行う | 申出後、遅滞なく(概ね1か月以内) | 同条第2項 |
| 事業者が医師から意見を聴く | 面接指導後、遅滞なく(概ね1か月以内) | 法第66条の10第5項、規則第52条の19 |
| 事業者が就業上の措置を判断・実施する | 医師の意見を勘案し、必要があると認めるとき | 法第66条の10第6項 |
| 事業者が面接指導結果の記録を作成・保存する | 5年間保存 | 法第66条の10第4項、規則第52条の18 |
1. なぜ申出をためらうのか
3つの心理的障壁
障壁1: 人事に知られる不安 「申出をすると査定や配置に影響するのでは」と心配する。
障壁2: 上司に知られる不安 面接のために業務時間中に離席することで、上司・同僚に知られると感じる。
障壁3: 自分は大丈夫という過小評価 「自分より忙しい人が多い」「このくらいで相談するのは大げさ」と遠慮してしまう。
手順とルールを先に伝える
- 申出を理由とする不利益な取扱いは法律で禁止されていることを明示する(法第66条の10第3項)。ストレスチェックを受けないことや、結果の事業者への提供に同意しないことなどを理由とする不利益な取扱いも、厚生労働省の指針で禁止されています。
- 申出は、上司を経由せず、実施者や外部の実施機関などの窓口を通じて行えるようにする。
- ただし、法定の面接指導は事業者が実施し、結果の記録を作成・保存するものです。申出をすると、面接指導の手配のために会社(担当者)が申出者の氏名などを把握することを、事前に正直に説明しておきましょう。
- 名前を伏せて相談したい人には、法定の面接指導とは別の相談窓口があれば、それも案内する。
- 面接の場所・時間はプライバシーに配慮して設定する。
- 経営層・管理職から「申出は推奨される行動」とメッセージを発信する。
2. 申出しやすくする5つの工夫
工夫1: 結果通知に申出の方法をわかりやすく載せる
Webで結果を通知する場合は、結果画面から申出の手続に進める導線を設けると、手間が減ります。紙で通知する場合も、申出の方法・窓口・時期の目安(結果通知後、概ね1か月以内)を明記しましょう。Web・紙のどちらで実施するかは事業場ごとに選べます。
工夫2: 実施者から面接指導の申出を勧奨する
ストレスチェックを行った医師等(実施者)は、面接指導の対象となる労働者に申出を勧奨することができます(労働安全衛生規則第52条の16第3項)。厚生労働省のQ&Aでも、勧奨は実施者が行うことが望ましいとされています(Q9-1)。
個人の結果は本人の同意なく事業者に提供されない(法第66条の10第2項)ため、会社が高ストレス者の名簿を持つことを前提にした連絡方法は取りません。勧奨の方法は、衛生委員会等で調査審議のうえ事業場ごとに決めます。
工夫3: 実施方法の選択肢を用意する
対面に加えてオンラインでの実施を選択肢にすると、移動や離席の負担を減らせる場合があります。オンラインで行う場合は、厚生労働省が示す実施上の要件を事前に確認してください。
工夫4: 管理職を通さない申出ルートを定める
申出の受付窓口(実施者、産業医、外部の実施機関など)と手順を衛生委員会等で定め、上司を経由せずに申し出られるようにします。社内外の相談窓口(EAP等)は、法定の面接指導とは別の相談先として併せて案内すると、本人が選びやすくなります。
工夫5: 申出がない対象者への再度の案内(運用例)
一次の案内から一定期間(例:2週間)申出がない対象者に、実施者から再度案内する運用もあります。強制はせず、「念のためのご案内」という表現にします。期間は事業場の手順に合わせて決めてください。
3. 面接指導実施時の実務ポイント
面接指導前の準備
面接指導を行う医師には、次のような情報を必要な範囲で提供します。
- 申出者のストレスチェックの結果
- 勤務の状況(労働時間、業務の内容など)
ストレスチェックの個人の結果を事業者側から医師へ渡す場合や、外部の医師に依頼する場合は、本人の同意の有無と、提供する情報の範囲を事前に整理し、衛生委員会等で定めた手順に従ってください。健康診断の結果など、その他の健康情報を併せて提供する場合も、本人に説明したうえで必要な範囲に限ります。
医師が確認する事項
医師は面接指導で、ストレスチェックの項目(心理的な負担の原因、心身の自覚症状、周囲の支援)のほか、次の事項を確認します(労働安全衛生規則第52条の17)。
- 勤務の状況
- 心理的な負担の状況
- その他の心身の状況
医師の意見と就業上の措置
事業者は、面接指導の後、遅滞なく(概ね1か月以内)、就業上の措置の必要性の有無と内容について医師の意見を聴かなければなりません(法第66条の10第5項、規則第52条の19)。
医師の意見の例としては、通常勤務でよい、就業を制限する(時間外労働の制限、業務の軽減など)、休業を検討する、といったものがあります。
そのうえで事業者は、医師の意見を勘案し、必要があると認めるときは、本人の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置を講じます(同条第6項)。措置を決めるのは事業者です。内容は本人に説明し、話し合いながら進めることが実務上大切です。
4. 面接指導結果の記録と情報管理
事業者が作成・保存する法定の記録
事業者は、面接指導の結果の記録を作成し、5年間保存しなければなりません(法第66条の10第4項、規則第52条の18)。記録には次の事項を記載します。
- 実施年月日
- 労働者の氏名
- 面接指導を行った医師の氏名
- 勤務の状況・心理的な負担の状況・その他の心身の状況
- 就業上の措置に関する医師の意見
医師の詳細な面接メモとの区別
面接で話された詳しい内容(医師の診療上のメモなど)と、事業者が作成・保存する法定の記録は分けて考えます。厚生労働省のQ&Aでは、就業上の措置に関する医師の意見は、必要な情報に限定すれば本人の同意がなくても事業者に伝えることができる仕組みである一方、円滑に行うため、面接指導にあたって事前に本人に説明し了解を得ておくことが望ましいとされています(Q13-1)。
記録の取扱いで注意すること
- 事業者に伝える情報は、就業上の措置に必要な範囲に限る
- 記録を取り扱う担当者を限定し、上司等への共有は措置の実施に必要な範囲にとどめる
- 他の従業員の個人情報を記録に含めない
- 面接指導の実施の事務に従事した者には守秘義務があります(法第104条)
5. 面接指導後のフォローアップ(運用例)
以下は運用例です。時期や内容は医師の意見と事業場の手順に合わせて決めてください。
短期フォロー(例:措置開始後2週間〜1か月)
- 就業上の措置の実施状況の確認
- 本人の体調変化の聞き取り
- 上司への配慮の指示が機能しているかの確認
中期フォロー(例:3か月後)
- 状態の変化の確認
- 職場環境改善の取組状況の確認
- 再度の面接の必要性の検討(医師と相談)
長期フォロー(例:6か月〜1年後)
- 翌年のストレスチェックまでの経過観察
- 再発防止策の検討
- 個人が特定されない形での組織的改善への反映
6. 事業者が注意すべき点
次のような対応は、法令上の手続に反するほか、民事上の責任を問われるおそれもあります。
- 面接指導の申出があったのに、遅滞なく医師による面接指導を行わない(規則第52条の16第2項)
- 申出をしたことを理由に、不利益な取扱いをする(法第66条の10第3項)
- 医師の意見を聴かない、または意見を勘案せずに必要な措置を検討しない(同条第5項・第6項)
- 措置に必要な範囲を超えて、面接の内容を上司などに共有する
衛生委員会等で申出・面接指導・記録の手順を定め、運用を定期的に点検することが重要です。
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COCKPITOSでは、Webでのストレスチェックの実施から、個人帳票・組織分析までを支援します(紙受検は準備中です)。
- 個人結果の画面から、外部相談窓口・医師面談予約の画面へ移動できる導線
- 産業医向けの画面で、高ストレス者一覧と面談の管理
- 組織分析は、COCKPITOSの設計として10名以上の集団で集計(法令上の一律の下限を示すものではありません)
- 面接指導を行う医師の手配は個別にご相談ください
まとめ
高ストレス者への面接指導は、ストレスチェック制度の「出口」です。申出の手順と不利益取扱い禁止のルールを先に伝えること、実施者による勧奨、医師の意見聴取と事業者による措置の判断、そして事業者が作成・保存する記録の適切な管理まで、一貫した運用体制が求められます。
「実施して終わり」ではなく「面接指導と職場改善までつなげる」ことで、ストレスチェック制度は本来の価値を発揮します。
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