税理士の顧問先支援 — 2028年ストレスチェック義務化で増える労務・メンタル相談への備え
- 2028年4月から全事業所にストレスチェック義務が拡大(厚労省)=税理士の顧問先も対象に
- 決算・税務の相談に加え、労務・メンタルヘルスの相談が増える見込み
- 税理士の役割は「情報提供と気づきのきっかけ」=個別の労務助言は社労士の領域(業務範囲を尊重)
- 実施者つきツールなら、顧問先は実施者を別途手配せず義務対応の体制を整えやすい
- 個人のSC結果を離職予測・人事評価に使わない(労安法66条の10)
はじめに — 税理士にも「労務の相談」が届く時代
税理士にとって、顧問先との会話は税務・会計にとどまりません。「人が採れない」「若手がすぐ辞める」「メンタル不調で休職者が出た」——経営者がもっとも身近に相談するのは、毎月顔を合わせる税理士であることが少なくありません。
2028年4月、ストレスチェックの実施義務が従業員50人未満を含むすべての事業所へ拡大される方向です(厚生労働省)。税理士の顧問先の多くを占める中小企業が、初めてこの制度と向き合うことになります。決算や資金繰りの相談の隣で、「うちもストレスチェックをやらないといけないの?」という質問が増えていくでしょう。
本記事では、税理士業務の範囲を踏まえたうえで、顧問先に何を情報提供でき、どう社労士や実施者つきツールにつなげられるかを整理します。
1. まず押さえる業務範囲の線引き
大前提として、個別具体的な労務管理の法的助言は社会保険労務士の業務範囲です。就業規則の作成、労働条件の個別判断、労使トラブルへの対応などは、税理士が踏み込むべき領域ではありません。
一方で、制度の存在や施行時期といった一般的な情報提供は、税理士でも自然に行えます。「2028年からストレスチェックが全事業所で義務になるようです」「早めに準備しておくと安心ですよ」と気づきを促すことは、顧問先の信頼に応える行為です。
税理士の立ち位置は、こう整理できます。
| 税理士が担えること | 専門家につなぐこと |
|---|---|
| 制度・施行時期の一般的な情報提供 | 就業規則・個別の労務判断(社労士) |
| 「準備が必要そうだ」という気づきの提供 | ストレスチェックの実施(実施者つきツール/有資格の実施者) |
| 費用感を経営の相談として一緒に考える | 高ストレス者の面接指導(医師) |
情報提供の入り口は税理士、専門的対応は社労士・実施者へ。この役割分担が、顧問先にとっても税理士にとっても安全です。
2. 顧問先に伝えられる「2028年義務化」の要点
税理士が顧問先に情報提供する際、押さえておくとよい事実は次の通りです(出典=厚生労働省)。
- 2028年4月から、従業員50人未満を含むすべての事業所にストレスチェックの実施義務が拡大される方向
- ストレスチェックには「実施者」が必要で、なれるのは医師・保健師・所定の研修を修了した看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師(税理士も社労士もなれない)
- 個人の結果は本人にのみ通知され、本人の同意なく会社は取得できない(労働安全衛生法第66条の10)
制度の全体像はストレスチェック義務化はいつから?2028年4月の全事業所義務化を完全ガイド、50人未満の準備は50名未満事業所のストレスチェック義務化 完全準備ガイドで詳しく解説しています。顧問先に案内する際の参考にしてください。
3. 税理士ができる「つなぐ」支援 — 実施者つきツールの案内
顧問先が「実施者を誰に頼めばいいか分からない」と困っているとき、税理士が直接実施者になることはできません。しかし、有資格の実施者が関与している『実施者つきツール』の存在を情報提供することはできます。
実施者つきツールとは、医師・保健師・精神保健福祉士などの有資格の実施者が設計・運用に関与しているストレスチェックサービスのことです。顧問先がこうしたツールを導入すれば、実施者を別途探して契約する手間をかけずに、法令上の実施体制を整えやすくなります。
税理士にとっての利点は明確です。
- 専門外の労務判断に踏み込まずに済む: 「実施者はこのツールに含まれています」と情報提供すれば足りる
- 顧問先の困りごとに応えられる: 決算だけでなく、経営の悩みに寄り添える
- 社労士との連携がスムーズ: 労務の個別対応が必要なら社労士へ、実施はツールへ、と自然につなげる
COCKPITOSは、有資格の実施者が関与するプランを備えたストレスチェックに対応しています。士業のみなさんが顧問先を紹介し、導入後も伴走できるパートナーの仕組みもご用意しています(詳細はパートナープログラムをご覧ください)。
4. 「義務対応」から「定着支援」へ広げる視点
顧問先の経営者が本当に困っているのは、多くの場合「制度対応」そのものよりも「人が辞めること」です。ストレスチェックを入り口に、集団分析(10名以上)で職場のストレス傾向を可視化し、パルスサーベイ・1on1・スキルマップと組み合わせれば、法令対応から定着支援まで話を広げられます。
税理士が労務の個別助言に踏み込む必要はありません。「こういう仕組みで、義務対応をしながら定着支援までできるようですよ」と情報提供し、具体的な設計は社労士や実施者つきツールにつなぐ——これだけで、顧問先にとっての価値は大きく変わります。
⚠️ ひとつだけ守るべき線引きがあります。個人のストレスチェック結果を、離職予測や人事評価の材料に使うことはできません(労働安全衛生法第66条の10の趣旨)。定着支援に使ってよいのは、あくまで集団単位の傾向分析です。顧問先に案内する際もこの点を添えると安心です。
まとめ
2028年4月の全事業所義務化で、税理士の顧問先にも労務・メンタルの相談が届くようになります。税理士にできることを整理します。
- 情報提供と気づきのきっかけを担う(個別の労務助言は社労士の領域)
- 2028年義務化の要点を、出典を添えて正確に伝える
- 実施者つきツールの存在を情報提供し、実施者確保の壁を越える手助けをする
- 義務対応から定着支援へ話を広げ、社労士・ツールにつなぐ
- 個人のSC結果は離職予測・人事評価に使わない(66条の10)
顧問先の「2028年問題」は、税理士が寄り添える新しい相談領域です。専門の線引きを守りながら、気づきの入り口として支援していきましょう。
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