はじめに
顧問先から「ストレスチェック、うちもやらないといけないの?」「どこに頼めばいいの?」と聞かれる機会は、これから増えていきます。
そのとき社労士事務所ができることの一つが、顧問先に合うサービスを一緒に選び、使い始めを支えることです。ただし、ストレスチェックのように心身の状態に関わる情報を扱うサービスでは、「誰が契約し、誰が実施し、誰が何を見られるのか」を顧問先ごとに整理しておかないと、後から顧問先の信頼を損ねかねません。
本記事では、社労士事務所が顧問先1社ごとにSaaSの導入・運用を支援するときに確認しておきたい論点を整理します。
1. 前提:50人未満の事業場も2028年4月1日から義務化
厚生労働省は、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、令和10年(2028年)4月1日から、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されると公表しています(出典:厚生労働省「ストレスチェック制度」関連ページ)。
これまで努力義務だった小規模事業場も対象になるため、顧問先の多くで「初めて実施する」準備が必要になります。対象は会社単位ではなく事業場単位である点も、顧問先への説明で押さえておきたいポイントです。
最新の施行内容や実施マニュアルは、必ず上記の厚生労働省ページで確認してください。
2. 「顧問先ごとに導入する」という考え方
2.1 契約とデータは顧問先ごとに分ける
ストレスチェックのサービスを導入するとき、利用契約の当事者は顧問先企業であることが一般的です。契約主体と、個人結果の保存・管理・閲覧を担当する者を分けて整理します。顧問先が契約者であることと、個人結果を閲覧できることは別です。
そのため、事務所が複数の顧問先の分をまとめて契約したり、1つのアカウントで複数社のデータを扱ったりする形より、顧問先ごとに契約し、顧問先ごとにアカウントとデータを分ける形のほうが、責任の所在を説明しやすくなります。
2.2 個人の結果は、事業者にも見えないのが原則
ストレスチェックの個人結果は、本人の同意なく事業者に提供してはならないと定められています(労働安全衛生法 第66条の10)。本人の同意なく、個人結果を経営者や人事担当者へ提供することはできません。COCKPITOSでは企業側画面に個人結果を表示しません。
顧問先の支援に関わる社労士事務所も、この原則を前提に関わり方を決める必要があります。サービスを選ぶ段階で「個人結果は誰が見られる設計か」を確認しておくと、導入後の説明がぶれません。
2.3 集団分析は個人を特定できない方法・単位で
部署ごとの集団分析は、個人を特定できない方法で行い、有効な回答数が少ない場合は集計単位・方法を実施者と確認します。人数条件は在籍人数ではなく、実際に受検した有効なデータ数で確認します(厚生労働省:ストレスチェック制度実施マニュアル p.84)。少人数での個人特定防止と分析方法の例は、厚生労働省の2026年7月のリーフレットに示されています。10人未満の集団の扱いは、厚生労働省のQ&A(改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関するQ&A)で原則と例外を確認し、実施者と相談して決めましょう。小規模な顧問先ほど、「部署別の結果が出るとは限らない」ことを事前に伝えておくことが大切です。
3. 導入前に顧問先と確認しておきたい7つの論点
顧問先ごとに、次の7点を導入前に確認しておくと、使い始めてからの行き違いを減らせます。
| # | 論点 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 1 | 契約主体 | 契約するのは顧問先か。請求は誰に届くか |
| 2 | 実施者 | 医師・保健師・研修を修了した精神保健福祉士等のうち、誰が実施者を務めるか。サービスに含まれるか、別途手配か |
| 3 | 実施事務の担当 | 社内で受検の案内・督促を行うのは誰か。人事権を持つ人が個人結果に触れない体制になっているか |
| 4 | 個人結果の扱い | 本人への通知方法、面接指導の申出の受け方、事業者への提供に関する同意の取り方 |
| 5 | 集団分析の単位 | 部署構成と有効な回答数の見込み。少人数の部署をどう扱うか。契約プランで確認できる分析の範囲 |
| 6 | 実施時期 | 年間のどの時期に実施するか。衛生委員会等での審議の予定(設置義務のある事業場の場合) |
| 7 | 事務所の関与範囲 | 事務所がどこまで手伝い、どこからをサービス提供者に任せるか |
特に7番は、顧問契約の範囲とも関わります。事務所が何を引き受け、何を引き受けないかを最初に言葉にしておくと、顧問先も事務所も安心して進められます。
4. サービス提供者に確認したい質問
技術的な仕組みを細かく理解する必要はありません。顧問先の立場で、次のような質問をしてみてください。回答が具体的で、書面や画面で確認できるかどうかが判断材料になります。
- データの分け方:「この会社のデータを、他の利用企業が見ることはありますか? 契約・アカウントはどの単位で分かれますか?」
- 個人結果の閲覧範囲:「個人のストレスチェック結果を見られるのは誰ですか? 人事担当者の画面には何が表示されますか?」
- 実施者:「実施者はサービスに含まれますか? 含まれる場合、どのような資格・経験の人が務めますか?」
- 集団分析の条件:「何人以上(有効な回答数)の集団から部署別の結果が出ますか? それ未満の場合はどうなりますか? どのプランでどこまでの分析が含まれますか?」
- 問い合わせ窓口:「従業員や人事担当者からの問い合わせは、どこが受けますか? 専門的な質問は誰が答えますか?」
- 解約時の扱い:「利用をやめたとき、データはどうなりますか? 結果の保存についてどう対応していますか?」
- 費用の構成:「最低料金はありますか? 税抜・税込の表示と、どのサービスが含まれるかを教えてください。」
デモやトライアルがある場合は、人事担当者の画面と従業員の画面の両方を見せてもらい、個人結果がどこに表示され、どこに表示されないかを確認するのがおすすめです。
5. 事務所が担いやすいこと、専門家に任せること
顧問先の支援を広げるといっても、事務所がすべてを抱える必要はありません。役割を分けて考えると、無理なく続けられます。
| 事務所が担いやすいこと | サービス提供者・専門家に任せたいこと |
|---|---|
| 顧問先の状況に合うサービスを一緒に考える | 実施者としての業務(結果の確認・面接指導の勧奨など) |
| 導入の段取りや社内への案内の相談に乗る | 高ストレス者の面接指導(医師) |
| 就業規則・衛生委員会など労務面の助言 | システムの設定・運用・保守 |
| 使い始めの疑問を最初に受け止める | 分析結果の読み解きなど、専門的な質問への回答 |
「顧問先にとっての一番の相談相手」という事務所の立場を保ちながら、専門的な部分は適切な相手へつなぐ。この形が、顧問先の信頼を守りながら支援を広げる近道です。
6. COCKPITOSの場合
COCKPITOSは、ストレスチェック・外部相談窓口・1on1・スキルマップ・研修管理・パルスサーベイの6つのサービスを持つ人事プラットフォームです。社労士事務所に関わる点を、現在の提供内容に沿ってまとめます。
- 顧問先1社ごとのご利用:ご契約・ご利用は顧問先ごとです。事務所が複数の顧問先をまとめて管理する形では提供していません。
- 実施者つき:ストレスチェックは、実施者(精神保健福祉士)つきで実施します。当社代表は社会保険労務士・精神保健福祉士です。ストレスチェックの実施者として実務に携わってきました。
- 個人結果は企業側に表示されません:個人のストレスチェック結果は企業側の画面には表示されません。人数条件は在籍人数ではなく、実際に受検した有効なデータ数で確認します。少人数の集団では個人を特定できない分析方法・表示範囲を実施者と確認します。COCKPITOSの画面表示と5〜9名の運用は、確認済みの製品仕様を別途ご案内します。
- 料金:料金は料金ページに掲載しています(税抜)。従業員50名以上の企業は6サービスのバンドルでのご提供(単品販売なし)、従業員50名未満の企業はストレスチェック単発利用・単品モジュール(1on1・パルスサーベイ・スキルマップ)・バンドルからお選びいただけます。外部相談窓口と研修管理はバンドルに含まれるサービスです。SC単発には基本集団分析(全社1枚)が含まれます。部署別の詳細分析・経年比較などの組織分析はバンドルの対象です。個人が特定されない集計単位と、契約プランに応じて確認できる範囲を事前に確認します。
- パートナー制度:顧問先をご紹介いただく社労士・税理士事務所向けにパートナー制度があります。先生には、顧問先へのご紹介と初回のお引き合わせ、アカウント発行のお手伝い、使い始めのご説明、最初のお問い合わせの受付をお願いしています。ご提案と導入設定、システムの運用・保守、結果の分析・報告、専門的なお問い合わせへの対応はCOCKPITOSが引き受けます。報酬や参加条件は、パートナー相談で個別にご案内しています。
まとめ
2028年4月1日から、50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。顧問先にサービスを勧め、導入を支援する社労士事務所にとって大切なのは、
- 契約とデータを顧問先ごとに整理すること
- 個人結果の扱いと集団分析の条件を、導入前に顧問先と確認すること
- 事務所が担うことと専門家に任せることを言葉にして分けること
の3点です。本記事の7つの論点と質問リストを、顧問先ごとの確認にそのままお使いください。
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