文:一木信輔|COCKPITOS株式会社 代表取締役・社会保険労務士・精神保健福祉士
ストレスチェックの結果を受け取った後、経営者は何を考え、現場の管理職は何に取り組めばよいのでしょうか。
私は、結果を説明するだけでなく、経営の立場でできることと、現場の管理職ができることを分けて考えることが大切だと思っています。
先日、ある企業のストレスチェックの分析レポートについて、社長にフィードバックする機会がありました。そこで話題になったのは、中間管理職の負担です。今回は、その分析と対話から、仕事の分担や権限をどう見直していくかというお話をしたいと思います。
※企業が特定されないよう、企業名などは記載していません。分析とフィードバックは実施済みですが、以下の改善策は今後取り組む方針です。負担軽減などの効果を確認した事例ではありません。
「なんとなく分かっていたこと」が、数字で確かめられた
社長は、現場で起きていることを感覚としては把握されていました。分析結果をお伝えすると、その感覚を数字で確認できたことに納得感があり、数字をもとに現場へ働きかけられる、という趣旨のお話がありました。
経営者が現場を知らないから、分析が必要になるとは限りません。現場に目を向けていても、感じていることを整理し、管理職と共有するための材料が必要なことがあります。
今回、ストレスチェックの結果は、その話し合いの材料になりました。
ただし、数字を示せば原因がすべて分かるわけではありません。私は、数値から見える傾向を説明したうえで、実際の仕事の進め方と照らし合わせながら、背景を確かめることを重視しています。
業務量の負担が高い一方で、裁量が低い
今回の分析では、中間管理職に、業務量の負担が高く、裁量が低いという傾向が見られました。
ここで、単に「管理職が忙しい」という理解で止めないことが重要です。仕事の量に対して、自分で判断できる範囲はどうなっているのか。部下に仕事を任せられる状態なのか。そうした点を確認する必要があります。
社長との対話では、部下に仕事を任せきれず、自分で処理してしまうことや、責任に対して判断できる範囲が狭いことについても話が出ました。
業務を抱え込んでいるという背景は、数字だけから断定したものではありません。分析で見えた傾向と、社長から伺った現場の状況を合わせて考えたものです。
そこで今後は、職務を明確にし、中間管理職が担うべき仕事と、必ずしも本人が担わなくてよい仕事を整理していく方向になりました。
職務を明確にするには、全員の仕事を洗い出す
職務を明確にするためには、まず全員の仕事の中身を洗い出す必要があります。
毎日、朝から何をしているのか。週に一度程度行っている仕事は何か。月に一度程度行っている仕事は何か。役職名や大まかな担当だけでなく、実際に行っている業務を具体的に挙げていきます。
そのうえで、一つひとつの仕事について、次の点を整理します。
- その業務を遂行するために、どのような能力や経験が必要か。
- どこまで自分で判断でき、どこから上司の確認が必要か。
- 必要な権限が、実際にその仕事をする人に与えられているか。
「部下に任せてください」と言うだけでは、仕事の分担は変わりません。任せる相手に能力があっても、必要な権限がなければ、確認や処理が管理職に戻ってきてしまいます。
仕事の内容と、それを担うための能力・権限を合わせて整理することが必要です。
権限を見直し、任せる側の管理職も支える
部下に仕事を任せられるように、権限の見直しを行います。そして、実際に任せてみることも重要です。
その際に、中間管理職を放置してはいけません。
仕事を任せ始めると、どこまで任せてよいのか、どのようなときに自分が関わるべきなのか、迷う場面も出てきます。管理職同士の横のつながりを強化し、「こういうときにはどうしているか」という事例を共有することが必要です。
部下への権限移譲を進めるだけでなく、任せる側も相談できるようにする。経営側には、その環境づくりにも取り組んでほしいと思います。
1on1では、やりにくくなったことも、やりやすくなったことも聞く
仕事を任せた後は、進捗だけを確認して終わりにしないことが大切です。
仕事を進めるうえで、やりにくいことはないか。逆に、やりやすくなったことはないか。1on1では、こうしたことを丁寧に確認していきます。
困っていることが分かれば、必要な支援や仕事の進め方を考え直せます。やりやすくなったことも確認できれば、今回の変更の何がよかったのかを振り返る材料になります。
話したことや次に取り組むことを記録し、次回の面談で確認する。小さな見直しを繰り返していくことが重要だと考えています。
スキルの可視化と、対話の記録を改善に使う
今回の企業では、今後の取り組みにcockpitos AIのスキルマップと1on1の機能を活用していく方針です。
スキルマップではスキルの状況を可視化し、仕事を任せる際に確認する材料にします。1on1では丁寧にコミュニケーションを取り、その内容やアクションを記録して、次の振り返りにつなげます。
システムを導入するだけで、仕事の分担や権限が自動的に変わるわけではありません。何を任せ、どのように支えるかを企業として考え、その取り組みを続けるために機能を活用します。
ストレスチェックで得た気づきを、日々の仕事の見直しまでつなげていきたいと考えています。
経営ができることと、管理職ができることを分けて考える
ストレスチェックの結果を受け取ったら、経営の立場でできることと、現場の管理職ができることを分けて考えてほしいと思います。
今回のようなケースでは、仕事の分担や権限を見直し、管理職同士が相談できる環境を整えることは、経営側が取り組む課題です。
一方、管理職には、部下に仕事を任せ、その後の1on1で「やりにくいことはないか」「やりやすくなったことは何か」を丁寧に確認してほしいと思います。
結果を現場に渡して終わりにせず、それぞれの立場で何を変えられるかを考える。それが、私がストレスチェックの分析を具体的な改善につなげるために大切にしていることです。
すでにあるストレスチェックの結果を、次の行動へ
ストレスチェックは実施しているけれど、その結果をどう活かせばよいか分からない。管理職に改善を求めているが、何を変えるべきか整理できていない。そうした場合は、分析の活用からご相談ください。
現在の実施方法や予算、現場の課題を伺いながら、経営と管理職がそれぞれ取り組めることを考えていきます。