ストレスチェックを実施して終わりにしない|一木信輔の現場と開発の考え

ストレスチェックを実施して終わりにしない|一木信輔の現場と開発の考え

文:一木信輔|COCKPITOS株式会社 代表取締役・社会保険労務士・精神保健福祉士

毎年、ストレスチェックを実施している。従業員への案内も結果の返却も滞りなく進み、担当者として特に困っていない。それでも、職場には解決したい課題が残っているかもしれません。

私は、ストレスチェックの実施者として、組織分析と従業員との面談に取り組んできました。スムーズに実施できることは、とても重要です。しかし、それだけで終わらせるのは、あまりにももったいないと感じています。

数字から何を読み取り、面談で何を確かめるのか。そして、分かったことをどう改善につなげるのか。この記事では、私が現場で向き合ってきた問いに沿って、経験とCOCKPITOSの開発に込めた考えをお伝えします。

申し出を待つだけでは、支援が届かないことがあった

問い:本人から面接の申し出がなければ、そこでできることは終わりなのか。

高ストレスと判定されたことが、そのままメンタルヘルス不調を意味するわけではありません。ただ、その中には医療につなげたほうがよいと感じる方もいます。

医師による面接指導は、本人からの申し出を受けて行う仕組みです。個人の結果が、そのまま会社に共有されるわけでもありません。支援が必要だと感じても、申し出につながらず、勤務を続ける中で休職や退職に至ることがありました。

私は実施者として個人の結果を把握できる立場ですが、そこで重視してきたのが組織分析です。本人からの申し出がないのであれば、そこで諦めるのではなく、職場をよくしていこうと考えました。

回り道かもしれません。でも、職場環境を改善できれば、結果的に高いストレスを抱える人を減らすことにつながるのではないか。その考えから、課題が見られる部署などで全員面談を実施してきました。

ストレスチェックという定量的な情報と、面談から得られる定性的な情報を併せて、現場で何が起きているのかを掘り下げてきたのです。

「助けたいけれど、何を助ければよいか分からない」

問い:「サポートが低い」という数字の背景に、何があるのか。

例えば、「上司のサポートが低い」「同僚のサポートが低い」という結果があっても、数字を見るだけでは、なぜ低いのかが分かりにくいのです。

私は多い年には年間1,000名、延べでは5,000人以上と面談してきました。その経験から、サポートが低くなる背景を大きく三つに整理しています。

一つは、人間関係が悪いこと。二つ目は、忙しすぎてサポートできないことです。特に二つ目は、仕事の量的な負担や勤怠の状況からも、ある程度見当がつきます。

面談でよく聞いたのは、三つ目の「誰が何をしているのか分からない。どのようにサポートすればよいか分からない」という声でした。

助けてあげたい気持ちはある。でも、その人がどんな仕事を抱えていて、どの部分なら引き受けられるのかが分からない。これも、サポートが低くなる背景にあったのです。

同じような数値でも、必要な対策は違います。「サポートが低いから、もっと助け合いましょう」と言うだけでは、解決しないことがあります。

これは私が面談経験から整理した見方です。すべての職場に同じ分類を当てはめるのではなく、実際の声を聞いて確かめることを大切にしています。

上司が指揮者になるために、仕事とスキルを見えるようにする

問い:助け合える職場にするために、何から始めればよいのか。

まずは、仕事の洗い出しです。

現在抱えている業務には、どのようなスキルや経験が必要なのか。その仕事を進める権限はあるのか。仕事を終えた後の責任も含めて、役割が明確になっているのか。そうしたことを整理していきます。

できることなのに、毎回上司の確認が必要な場合もあれば、まだ一人では難しいのに、上司の確認がない場合もあります。仕事の内容だけではなく、スキルと権限、責任の関係を見ていく必要があります。

その過程で、同僚同士もお互いの仕事の状況を把握できるようにします。タスク管理のあり方を見直すこともあります。

上司は、オーケストラの指揮者のように仕事を差配する必要があると思っています。でも、それは一人ひとりが何をしていて、どんなスキルを持っているかを把握して、初めてできることです。

だからCOCKPITOSには、スキルマップでスキルを可視化し、定期的な1on1で状況を確認するという考えを取り入れました。

1on1を勧めても、その後が見えなかった

問い:1on1を勧めるだけで、職場は変わるのか。

会社が実施状況を把握できていない。上司も何を聞けばよいか分からない。部下も、前に聞かれたことをまた話すだけになっている。そうした課題がありました。

ストレスチェックの後に、多くの職場で1on1を勧めてきました。でも、その後の状況が見えないので、対策が取られているのかどうか、次のストレスチェックまで待たなければならなかったのです。

その経験から、COCKPITOSでは部署ごとの1on1の実施状況を可視化しています。これまでの面談の記録をもとに、次の1on1でどんな会話をすればよいかを考える手がかりも確認できます。あくまでも、上司をサポートするためにAIを使うという発想です。

オンライン面談を行い、文字起こしやAI要約で内容を整理して、面談の履歴として残す仕組みもあります。この記録を確認するのは面談の当事者である上司と部下で、会社全体に公開されるものではありません。ただ、記録を残すこと自体が目的ではありません。

問い:面談の記録を、次の行動へどうつなげるか。

面談の記録から、次に取り組むことの候補を整理できるようにしています。上司は、聞き出した課題に対して、次の面談までに行動する。その結果について、次の1on1で話すことができます。

小さなことでよいと思っています。

小さな改善を、この1on1の仕組みとともに繰り返していく。その積み重ねが、上司と部下の関係や信頼につながると考えています。

実施に困っていなくても、職場には課題が残っていませんか

問い:「特に困っていない」なら、見直す必要はないのか。

困っていないというのは、事務フローとして大きな問題がないということだと思います。それは、実施者としても、とても重要なことです。

従業員がスムーズに受検できて、人事部や経営者に大きな手間がかからない。そのよさは大切にすべきです。

しかし、ストレスチェックをそれだけで終わらせるのは、あまりにももったいない。結果を丁寧に読み解けば、会社をよりよくするための材料に気づくことができます。

例えば、メンタルヘルス不調者が続けて出ている。休職が長期化している。若手や中途採用者の離職が気になっている。会社として手を打っているつもりなのに、改善の手応えがない。そうした悩みはありませんか。

ストレスチェックから職場環境の傾向を捉え、勤怠や人事の情報、現場の声も併せて考える。さらに、対策に取り組んだ後の状況も見えるようにする。分析と、その後の行動を組み合わせることが、課題の解決につながると考えています。

一人ひとりが力を発揮できる環境をつくり、それが会社の業績や、従業員への還元にもつながる。私は、そうした好循環を目指しています。

ストレスチェックの実施には困っていなくても、職場には解決したい課題が残っていないか。一度、その視点で振り返っていただきたいです。

今の予算で、何ができるかという相談から

問い:今の運用や予算を出発点に、何ができるのか。

私はまず、既にストレスチェックを実施している企業の人事部や経営者の方に、この記事を届けたいと思っています。

既に実施しているのであれば、そのための予算を組んでいる企業もあると思います。その予算の中でどこまでできるのかも含めて、相談していただけたらと思っています。

最初からすべての機能を導入する前提でなくても構いません。ストレスチェックの分析から始めることも、相談していただきたいです。

これから実施しようとしている企業にも、義務への対応時期だけで判断せず、今ある職場の課題に向き合う機会として考えていただきたいと思います。課題の改善につながる可能性があるのなら、早い段階から取り組む価値があるはずです。


今のストレスチェックで、次に取り組めることを考えませんか。

結果の活用、現在の運用や予算、分析からのスタートなど、検討していることをお聞かせください。対応範囲・必要な資料・費用は個別に確認します。

今の運用・予算に合わせて相談する
https://cockpitos.ai/contact

ストレスチェックの機能・実施体制を見る
https://cockpitos.ai/stress-check/


✍️ この記事を書いた人

一木 信輔 | COCKPITOS株式会社 代表取締役CEO

社会保険労務士/精神保健福祉士・ストレスチェック実施者10年。各媒体で違う角度から発信しています。フォローはこちら:

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